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県陸上界に偉大なジャンパーがいる。男子走り高跳びで、現存最古となる県高校記録を持っているのが小野晃司さん(59)だ。1984年にマークした2メートル20は東海高校記録でもあり、今でも日本高校歴代7位タイを維持している。浜松を中心にホテル業などを展開するサゴーエンタプライズの代表取締役社長としての顔を持つレジェンドの夢は、マスターズ陸上60歳以上の部で1メートル67の日本記録更新。大学卒業後、一度は離れた陸上でビッグジャンプを狙っている。
長年、走り高跳びの県高校記録を保持するジャンパーが再び、走り出した。大学卒業して一度は、陸上界を離れていた小野さんが60歳を前にして競技を再開。「マスターズの日本記録を作って、もう1回、日本一になりたい」。11月に還暦を迎える年男が、60歳以上の日本記録(1メートル67)超えを目標に掲げている。
かつては、五輪候補だった。小学校時代に浜松市内の大会で優勝。本格的に陸上を始めた静岡大付属浜松中時代には全国選手権大会で日本一に輝いた。浜松北高2、3年の全国高校総体は連続2位に終わったが、筑波大2年ではインカレVを飾り、アジア選手権の日本代表にも選出された。将来有望選手が、大学卒業して競技を離れた。会社を経営する父と「陸上は大学まで」が約束だった。
渡米して経営学を勉強。2004年に父の会社を継いで社長に就任してからは懸命に働いた。陸上は頭から消えた。ただ、会社務めて間もないころ、「もし、定年したらまた陸上やっていいかな」と、小野さんがつぶやいた言葉を、父は忘れていなかった。
2年前だった。「また陸上をやらなくていいのか」―。今は亡き父から、かけられた言葉がきっかけだった。「言われるまで忘れていた。陸上を諦めさせた、という後ろめたさもあったのかな。その言葉でまた、跳びたい、という思いが芽生えた」。2年かけて90キロあった体重を70キロまで減量。ジムに通って一から体を鍛えた。60歳になるまでに、あと5キロは落とすのが当面のノルマだ。
県陸上協会はこのほど静岡所属選手をたたえるため、県記録、県高校記録などを持つ選手に「県記録章」を授与した。その中で、最古の記録が男子の走り高跳びで、小野さんが1984年11月3日の中日カーニバルで作った2メートル20だ。現在も日本高校歴代7位タイの記録となっている。
「大会パンフレットにまだ名前が残っている。静岡の高跳びをやる高校生が、僕の記録を目標に40年以上やってきたって考えると、すごく感慨深い」。
マスターズ挑戦以外に、もう一つやりたいことがある。今の中学生世代は学校の部活動がなくなるなどスポーツ環境が一変。陸上もクラブ化され、やりたくてもやれない子供が出てくる可能性を危惧している。
「一企業人として、子供たちのためにクラブのスポンサーになることも考えている。自分自身が(マスターズ陸上で)日本一になって“広告塔”になれればいいなあ」
経営者でもあり、レジェンドジャンパーでもある小野さんが、昭和、平成、令和の時代を経て、陸上界に一役買う。(塩沢 武士)
◆小野 晃司(おの・こうじ) 1966年11月16日、浜松市生まれ。59歳。静岡大付属浜松中から浜松北を経て、筑波大に進学。小6の時に、浜松市陸上競技会で1メートル50を跳んで優勝。中3時に全日本中学選手権でV。高2、3年で全国高校総体はいずれも2位だった。大学2年でインカレ優勝。同3年時に日本選手権2位に入った。この年アジア選手権に出場。自己ベスト2メートル23。180センチ、70キロ。家族は夫人と一男一女。サゴーエンタプライズ代表取締役社長。