イタリア・ローマで開催されている「BNLイタリア国際」(5月8~15日/ATP1000/賞金総額 374万8925ユーロ/クレーコート)は15日、男子シングルス準決勝が行われ、第2シードのアンディ・マレー(イギリス/3位)が、ラッキール…

 イタリア・ローマで開催されている「BNLイタリア国際」(5月8~15日/ATP1000/賞金総額 374万8925ユーロ/クレーコート)は15日、男子シングルス準決勝が行われ、第2シードのアンディ・マレー(イギリス/3位)が、ラッキールーザーで本戦に出場したルカ・プイユ(52位/フランス)を6-2 6-1で破り、決勝に駒を進めた。    ◇   ◇   ◇  22歳という年齢と、ときにストロークを大アウトするところは同じだが、もっともラッキーなラッキールーザー、ルカ・プイユは、もうひとりのドミニク・ティーム(オーストリア)ではなかった。少なくともこの日に限っては――。

 予選の2回戦でミカエル・ククシュキン(カザフスタン)にストレート負けしたが、同胞のジョーウィルフリード・ツォンガが故障での棄権を決めたために、ラッキールーザーとして本戦に滑り込んだプイユは、予選上がりのエルネスツ・グルビス(ラトビア)と、故障上がりのダビド・フェレール(スペイン)を倒して勝ち上がり、スタン・ワウリンカ(スイス)を倒したフアン・モナコ(アルゼンチン)との準々決勝を、モナコの棄権によってスルーして、この準決勝に至っていた。  しかしマレーとの決戦に挑んだもっともラッキーな男の運は、ここまでだったようである。『入れば怖い』プイユのフォアハンドの強打は、この日、あまり確率が高くなく、マレーはストローク戦で、そう無理はしていなかった。ここ2年、クレー上での動きを目覚ましく向上させたマレーは、赤土の上をスルスルと動き、軽やかに打ち、いいタイミングでドロップショットを放ち、その返球を鮮やかに決め返す。プイユもなかなかのドロップショットを見せたが、やや多発し過ぎ、読まれて墓穴を掘ることも少なくなかった。  立ち上がりは悪くなかったが、最初のブレークを許して1-3とされたあとのプイユは、マレーをあまり苦しめていなかった。断続的にストロークでエースは取ったもののミスが早く、プイユはドロップショットが乱れ飛んだ第8ゲームをふたたびブレークされて、第1セットを落とす。第2セットも同じようなテンポで進み、プイユのミスはますます加速。最後はマレーが楽にサービスをキープし、やや期待外れの準決勝は、わずか59分の後に幕を閉じた。  これまでリシャール・ガスケ(フランス)やツォンガなど、トップの一角を破ったこともあり、当たり日にはミスの確率も減るのだが、プイユにはフランス選手にありがちな、ムラがあるようである。試合後、「やっぱりマレーは強いね。滅多にフリーポイントをくれないし、セカンドサービスになるとコートの中、2mくらいまで入ってくるんだから、容赦ないよ」と言ったプイユは、続く全仏オープンがどうなるかを考えたか、と聞かれると、こう答えた。

 「それはまだだ。今僕が考えている唯一のことは、少し休養をとって、友達と飲みに行って、食事して、2日くらいのオフ日を楽しむことだけ。そのあとには、間違いなく準備万端になるよ。(ここでの躍進で)今までより少し余計にプレッシャーを感じるかもしれないけど、今のところ、それはない」  一方、ここ2年で4度目のクレーコート大会決勝進出を果たしたマレーは、クレーでのプレーが劇的に向上したきっかけを聞かれ、それが昨年のミュンヘンの終盤とマドリッドでの優勝だったと答えた。

 「クレーでの初タイトルを獲ったことが、大きな自信となった。マドリッドでは真夜中にプレーしたりと、厳しい試合を潜り抜けたが、ミュンヘンで勢いに乗り、僕はそこ(2015年のマドリッド)で、(ミロシュ・)ラオニッチ、錦織、(ラファエル・)ナダルを倒した。それ以前には、クレーの上で、このレベルのランキングの選手を一貫して破ったことは、一度もなかったんだ。僕はその厳しかった数日間に、本当に多くのものを得たんだよ」  決勝日である5月15日に、マレーは誕生日を迎える。「実はこれまで、誕生日に勝ったことのほうが少ないんだ。誕生日に勝ったことがあったか、思い出せない。これはあまりいい兆しじゃないかな」と言って、笑う余裕さえ見せた。

 「いずれにせよ、僕は昨年のこの時期に多くの試合に勝ったが、今年の僕のほうがいいプレーをしていると思う。サービスが大いに向上した」とマレーは自信をにじませる。  決勝の相手がまだ決まっていなかったため、(ノバク・)ジョコビッチ、錦織と対戦するときの違いは何かと聞かれると、マレーは「彼らには共通点もたくさんある。ふたりともが素晴らしいバックハンドの持ち主だし、主にベースラインからプレーする。リターンに優れた選手たちでもある」とし、「だから戦術的意味で言えば、(決勝の相手が)どちらであろうと、そう大きな違いはない。でも言うまでもなく、ここ数年を振り返ると、対ノバクより、対ケイのほうが、対戦成績がいいよ」と続けた。

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)