ブンデスリーガ第12節シュツットガルト対ドルトムントは注目の一戦だった。日本代表の欧州遠征直後だったこともあり、日本人報道陣はいつもの倍。テレビ取材も通常1社のみに許可されることが多いのだが、この日は3社。もちろん、代表帰りの浅野拓磨…

 ブンデスリーガ第12節シュツットガルト対ドルトムントは注目の一戦だった。日本代表の欧州遠征直後だったこともあり、日本人報道陣はいつもの倍。テレビ取材も通常1社のみに許可されることが多いのだが、この日は3社。もちろん、代表帰りの浅野拓磨への取材というより、代表落選後の再スタートを切る香川真司のプレーとコメントをおさえることが、ほとんどのメディアにとって、この日のメインテーマだった。

 また、このタイミングであるスポーツ紙に、非公開練習後、車で帰路につく香川を直撃した記事が掲載された。そこで取材に答える香川のコメントを読むと、本人が話す機会を求めているようにも感じられた。そんなこともあって、ブラジル戦、ベルギー戦を観戦した後の香川が公の場で何を話すのか、日本メディアが殺到したのだ。



シュツットガルト戦に先発、後半18分までプレーした香川真司(ドルトムント)

 一方、ドイツメディアも多く集まっていた。金曜日開催のブンデス1部の試合はこの試合のみ。人員的に取材しやすいということもあるが、それ以上に、ドイツ杯を除いてここ7戦勝利がなく、連敗中のドルトムントへの注目は日増しに高まっている。最大の焦点は監督人事がどうなるのか。またこの日は、素行不良によりエースのオーバメヤンがメンバーから外れたことも大きな話題となっていた。

 ドルトムントにとっては、悪い流れを断ち切りたいという一心で臨んだ試合だった。しかし、先発した香川が試合を振り返る重苦しい口調でわかるように、ドルトムントは流れを断ち切れなかった。

「僕たちが相当意気込んだなかで、気持ちをアグレッシブに出していこうと、ああいう入りをしましたけど……」

 前半5分、DFマルク・バルトラが強めのバックパスを出すとGKロマン・ビュルキはトラップできず、ボールをさらわれてあっさり先制点を奪われた。今季はGKのミスや最終ラインの連係ミスからの失点が多く、それが敗因になることがしばしば。早い時間だったというだけでなく、またもありがちな形での失点ということで、意気消沈してしまった。

「(失点しても)俺らはそれでもやり続けるしかなかったですし、流れをうまく呼び込んで、しっかりと同点に追いついたところまではよかったのですけど、後半もあらためて早い時間帯に失点をしてしまったのが、すごく残念です。今のチーム状況を考えると、ああいう戦いになっちゃうとメンタル的にもそこで落ちちゃったのかなと思いました」

 そこには、勝てなくなったユルゲン・クロップ時代の終盤のような苛立ちもなければ、トーマス・トゥヘル時代のように表立った不協和音が聞こえてくることもない。だが、どうにもチームに自信が感じられない。

「少し(メンタルが)落ちているところはあると思っています。あとは、こういう試合になったときに、細かいところのポジショニングであったり、攻撃も守備も細かいところでサポートに入る姿勢であったり、ビハインドを背負っていたら、そういうところがどうしても消極的になりがちになる。そういうところで、どれだけ思い切ってやれるか。みんながやれなくても、(自分は)それをやろうとしなきゃいけないですし、それは自分に求められていること。どれだけリスクを背負いながら打開策を見出していけるかという意味では、個人的なリスクを負う姿勢が必要だと思います」

 だが、そのように自らの役割を自覚していた香川自身のプレーも冴えず、63分に交代。チームは1-2で敗れた。

「次の3月(次回の代表合宿)までやり続けるだけですし、その1歩目として、もちろん勝ちたかったですけど、それはしょうがない。次のチャンピオンズリーグ(CL)に切り替えたい。チームがこういう状況だからこそ、ひとりひとりがより頑張るというのをピッチの上で示していかないと。誰ひとり諦めていないし、気持ちが強い選手が多いので、あとはそれを結果として実らせるように、もうひと頑張りしたいと思います」

 このあとドルトムントはCLのトッテナム戦、シャルケとのレヴィアダービーと、重要な試合が続く。チームに厳しい視線が向けられている一方、ひとつの勝利が流れを大きく変えるチャンスでもある。ドルトムントと香川は試練の時期を迎えた。