台湾の中学野球指導者が語った現場の実態…山本由伸も教材に 日本の野球界ではなくなりつつある、いわゆる“昭和風”の指導。一…
台湾の中学野球指導者が語った現場の実態…山本由伸も教材に
日本の野球界ではなくなりつつある、いわゆる“昭和風”の指導。一方、日本と同じく野球が「国技」と言えるほど盛んな台湾には、指導者が選手に厳しく接する風潮が残っている。2025年12月、青森大学硬式野球部が台湾・高雄市を訪れ、現地の小中高生を対象とした野球教室や、大学との交流試合を行う国際交流活動を実施。台湾の指導者に話を聞くと、現場の実態の一端が明らかになった。
野球教室や交流試合の前後に、指導者が時間をかけて話をする。交流中は笑顔を浮かべていた選手たちも、そのたびに緊張感が漂い、背筋を伸ばして耳を傾ける。日本では“選手主体”の風潮が広がっているが、台湾では小中高でも、大学のチームでも、指導者の「厳しさ」が垣間見られた。
大仁中学校の林讚新監督は、「中学生年代は技術面よりも心理面が重要。ヤンチャな子も多いので、怒ることもあります」と口にした。とはいえ、頭ごなしに罵声・怒声を浴びせることは、決してないという。林監督は「今の子どもを指導する上では『話すこと』が何よりも大切。子どもが野球への情熱を持てるような、もっと野球が好きになるような接し方を心がけています」とも語る。
「話すこと」の中には、日本人の「野球に対する精神」を題材にすることもあるという。例えば昨年のワールドシリーズで山本由伸投手(ドジャース)がMVPを獲得した際には、選手たちに「山本投手に精神力が伴っておらず、あの舞台で萎縮してしまっていた場合、この結果は得られなかったはずだ」と伝えた。
現地で際立った「自主的に動く」日本人選手の姿
野球を通じた教育を重んじる上で、確かに「厳しさ」は必要なことかもしれない。一方で「主体性を失う」という懸念点もある。
青森大の選手たちが、監督・コーチ陣と適度な距離感を保ちつつ伸び伸びとプレーする姿を目にした五福中学校の鄭俊男監督は、「(台湾の子どもは)指導者が言ってやっと動く。自主的に動くことができないので、日本の野球から学ぶ部分は多いです」と感想を述べた。
また、交流試合を戦った高雄大学の蔡承凱内野手も「自分たちは『監督に言われたら練習する』という感覚ですが、日本のチームと同じように自主的に動くことも大切だと感じました」と自戒を込めて話した。日本で一般的になりつつある“主体性を育む指導”は、新鮮に映ったようだ。
もちろん指導方針に正解があるわけではないし、日本にも「厳しさ」を求める指導者はいる。ただ、視野を広げることには大きな意味があるはずだ。
「同じ野球でも、指導者の感覚はそれぞれ違っていて新鮮だった。日本は選手の主体性を重んじる風潮になってきていて、自分で考えて行動する選手が増えたけど、台湾は教育や規律の側面が強い。指導者として今一度見つめ直す機会になりました」とは青森大・三浦忠吉監督。いずれにせよ、「野球への情熱」は指導者にも選手にも欠かせない。(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)