<全国高校サッカー選手権:神村学園3-0鹿島学園>◇12日◇決勝◇MUFG国立神村学園(鹿児島)が鹿島学園(茨城)を3-…
<全国高校サッカー選手権:神村学園3-0鹿島学園>◇12日◇決勝◇MUFG国立
神村学園(鹿児島)が鹿島学園(茨城)を3-0で下し、初優勝を飾った。史上6校目となる夏の全国高校総体(インターハイ)に続く全国2冠を達成した。3年生FW日高元(はじめ)が得点王に輝く大会7点目で先制すると、MF堀ノ口瑛太、MF佐々木悠太(ともに3年)も続いた。有村圭一郎監督(48)は鹿児島実の選手として1995年度大会で優勝しており、監督としても選手権を制した。市船橋(千葉)で11年度大会を制した朝岡隆蔵監督以来。加えて鹿実の恩師・松沢隆司監督(故人)以来、県勢21年ぶり3度目の凱歌(がいか)を上げた。
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澄み切った国立の青空を見上げた。試合終了のホイッスルが鳴る直前、有村監督は恩師の姿をどこかに感じていた。初優勝にも涙はない。「松沢先生が、どこかに来てくれていたと思います」。優勝インタビューで喜びを、分かち合った。
下馬評通りの強さを見せつけた。FW徳村は町田、MF福島は福岡、DF中野はいわき、と3選手がJクラブへ。信じた選手たちが力を発揮した。うまさと強さのハイブリッドが旗印のチーム。5秒で奪い返す「即時奪回」で圧力をかけ、ボールを持てばピッチを広く使った攻撃全開だ。有村監督は「子供たちの努力の結晶。優勝した瞬間は本当に信じられない思いが強かった。信じられなかったら涙って出ないんだな、と思いました」。そう笑った。
「強い鹿児島を取り戻す」。そう繰り返した。名将・松沢監督の下、疾風怒濤(どとう)の堅守速攻型。最後まで粘り強く走り切る我慢強さが鹿児島のスタイルだった。その鹿実魂というべきハードワークを土台に、ボールを握ってゲームを主導する、うまさを作り上げた。監督就任から12年目。「ハイブリッド」と呼ぶスタイルを完成させた。
指導方針は新時代の姿をリードする。夏の総体決勝を制した翌日に、練習試合を3本も組むほどの猛練習を自信とする一方「勝負より選手が楽しむことが一番」「選手たちが輝いた先に勝利がついてくる」。さらには「指導者が選手の邪魔になってはいけない」とまで言い切る。それは自身の経験から導かれたものだ。
95年度大会で鹿児島勢として全国初制覇。当時は、後に鹿島や五輪代表で活躍したFW平瀬智行という大エースがいた。「彼が点を取ることで勝ち上がった。すごい経験をさせてもらった半面“自分はいなくてもいいのでは”という思いにもなった」。それゆえに監督となって「誰もが輝けるチームであってほしい」と願い、指導する。選手個々が判断し、自分たちでサッカーを突き詰める楽しさ。結果として「チームのために」という「For You」精神が生まれる。それが強さのベースにあった。
中盤で切れ味鋭いプレーを見せた、同校のエース番号14を背負う福島は「誰か1人に頼るのでなくチーム全員がプレーしないと勝てない。そういうチームづくりが良かった」。選手個々が輝く、その先に勝利が付随-。極めてシンプルでも大事なメッセージだ。「試合が終わった瞬間も『また明日があるんじゃないかな』みたいな」とも語った通り、サッカーという喜びや楽しみは、まだまだ続く。やり切ったではなく、これからだ。有村監督は「強い鹿児島」を進化させる形で取り戻した。【佐藤隆志】
◆有村圭一郎(ありむら・けいいちろう)1977年(昭52)6月19日生まれ。鹿児島県出身。鹿児島実3年で95年度の第74回全国高校選手権優勝。静岡学園相手に延長2-2で終え、PK戦がなかったため両校Vだった。サイドバック、ウイングバック。福岡教育大を卒業後、神村学園に体育教員として赴任。女子サッカー部コーチから初めて中等部監督を12年間、14年から現職。息抜きは料理で「段取りを考えるのがサッカーに似ていて楽しい」。
◆「鹿実の名将」松沢隆司監督 1940年(昭15)10月19日生まれ、17年(平29)8月11日没。享年76。鹿児島市出身。中学2年でサッカーを始め、鹿児島商に進学。全国高校選手権は第37回大会(58年度)にDFとして出場。専門学校を経て64年、電気科教諭で鹿児島実に赴任。66年にサッカー部の監督に就任すると、自らマイクロバスを運転して全国に遠征するなどの熱血指導で全国的な強豪校に育て上げた。全国高校選手権で2度の優勝と3度の準優勝。00年の定年後も総監督として指導し、11年に退任。教え子には前園真聖、城彰二、平瀬智行、遠藤保仁、松井大輔、那須大亮ら数多くのプロがいる。
◆神村学園高等部 1956年(昭31)創立の私立女子校が97年に男女共学となった。普通科、看護学科などがあり、生徒数は1216人(昨年7月)。サッカー部は02年創部で85人が在籍。インターハイ出場11回、全国選手権は12回。今季はプレミアリーグWEST5位。主なOBは橘田健人(川崎F)福田師王(ドイツ2部カールスルーエ)名和田我空(G大阪)ら。女子サッカー部も強豪で全国選手権の優勝3度。初のアベックVが期待された本年度は準優勝だった。学校のモットーは「やかぜ(やればできる!必ずできる!絶対できる!)」所在地・いちき串木野市別府4460。吉永輝彦校長。