イタリア・ローマで開催されている「BNLイタリア国際」(5月8~15日/ATP1000/賞金総額374万8925ユーロ/クレーコート)は13日、男子シングルス準々決勝が行われ、第6シードの錦織圭(日清食品/6位)が第13シードのドミニク…

 イタリア・ローマで開催されている「BNLイタリア国際」(5月8~15日/ATP1000/賞金総額374万8925ユーロ/クレーコート)は13日、男子シングルス準々決勝が行われ、第6シードの錦織圭(日清食品/6位)が第13シードのドミニク・ティーム(オーストリア/15位)を6-3 7-5で下し、準決勝に駒を進めた。  錦織は準決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア/1位)と対戦する。ジョコビッチは準々決勝で第5シードのラファエル・ナダル(スペイン/5位)を7-5 7-6(4)で破っている。ジョコビッチと錦織の試合は14日、センターコートの第4試合、現地時間20時00分以降に予定されている。

   ◇   ◇   ◇  錦織は、以前にティームと対戦したときのことを覚えていなかった(2015年ハレで対戦、7-6(4) 7-5で錦織が勝利)。

 しかしこのローマの夜のあとは、もう決して彼との、この試合のことを忘れることはないだろう。  難しい試合になることは、最初の瞬間から予感された。非常に無頓着なやり方で、フォアハンドの強打を炸裂させる“噂のティーム”は、その才能で、夜空の下のコートを輝かせた。

 第2ゲームで、ティ―ムが無造作に叩いたバックハンドがダウン・ザ・ラインに決まると、会場がどっとどよめく。ティームは、どちらかといえば細身に見える体から、電光石火のショットを連射し、かと思えば、ネット側に戻るかと思うような精度のドロップショットで、不意打ちを食らわせた。  第3ゲームには、ティームがライン近くに打ち込むフォアハンドがコート内に入り始め、ノータッチエースや、錦織が押されて返球できない場面が見られ始める。アウトすらが、いちいち観客席を沸かせたのは、それが入っていたらいかに恐ろしいかが、皆にわかっていたからだろう。4回のデュースを繰り返したこのゲームで、アドバンテージを握ったティームは、錦織をドロップショットで前におびき出し、パスでボレーミスを強いて、サービスブレークに成功する。しかし錦織はこのあたりから、成熟した選手としての、駆け引きの能力を見せ始めた。  強打とドロップショットを巧みに混ぜ、2-3からの第5ゲームでブレークバックに成功した錦織は、単調に後ろから打ち合う代わりに、今度はネットをとって、ボレーやスマッシュでポイントを稼いだ。無鉄砲な若いエネルギーと経験の、ピリピリした競り合いは続くが、錦織は、出だしのティームの爆発にも比較的落ち着いて対処したように見え、それによってティームのミスも増加。自分側のミスを減らし、ティームにミスをさせる形で、錦織は結局このセットを6-3でものにする。

 「ずっと試合が終わるまで、あまり心地いい感じはなかった。ミスもあったが、入ると非常に厳しくて重いショットを打ち込まれ、なかなか自分で主導権を握れないなと、ずっと思っていたし、そういう中で我慢しながらプレーしていた。少し自分が悪くなれば、あっちに流れがいくだろうことはわかっていたから、耐えながらプレーしていた」と試合後、錦織は打ち明けている。

 第2セットに入っても、激しい凌ぎ合いは続いた。錦織はプレースメントや球種で相手を振りつつ、しっかりとボールを返し、チャンスでは叩く賢明な戦略で、ティームの無鉄砲なパワーに対抗しようとする。しかし『入ると怖いフォアハンド』で攻める姿勢を変えないティームも、一歩も引かず、拮抗した展開は最後まで続いた。  「すごく大きいミスが彼の側にあったのが、彼の調子の問題なのかはわからないが、結構自分も重いボールをしっかり打てていたと思うので、彼を焦らせたり、ミスさせた部分もあったと思う。でも、難しい相手だった。どうプレーしたほうがいいのか、正解が最後までなかなか見えなかった」と、錦織は暗中模索しながら進んだこの試合を振り返った。

ドミニク・ティーム 

 ティームは断続的にスーパーショットを見せており、ストローク戦では幾分押し気味だったが、錦織はそれでも重要なポイントで、バックハンドのダウン・ザ・ラインなどの目覚ましいショットを繰り出し、サービスをキープしていた。そしてティームにミスが続いた5-5からの相手のサービスゲームで、錦織がついにブレークを果たす。

 6-5からの最終ゲームでも競り合いは続き、ティームのフォアハンドの逆クロスのエースが決まって、ブレークポイントを握られる場面さえあったが、錦織はしっかりと踏み堪えた。最後はティームのミスが3本続き、騒然とした雰囲気の中、試合の幕は下りた――。    ◇   ◇   ◇

 「ローマで初の準決勝進出を果たせてうれしい。非常に厳しい相手に対し、いい試合を戦うことができた。彼には弱点というものがあまりない。フォア、バック双方から重いショットを打ち込んでくる、厳しい相手だった」と試合後、錦織は言った。  「今日の試合は、グラウンドストロークの戦いだったが、いくつかの局面でいいプレーができた思う。彼は素晴らしいキックサービスを打つ選手なので、リターンのポジションを下げるなどして調整することが必要だったが、リターンはよかった」という錦織は、手探りで進んだこの日の対策について、次のように分析した。  「彼はバックが目立つが、フォアのほうが威力もあるし、左右に打ち分けられる。最初たぶんフォアに集めすぎて、彼のプレーをよくさせていたので、途中からやっと気づいて、フォアをしっかり使って高めのボールを彼のバックに集めたり、左右に打ち分けたりすることが徐々にできるようになった。たぶん一方向に集めすぎないのが、作戦としては一番必要だったかなと思う」  確かなことは、トップ5復帰を目指す錦織が気にしなければならないのは、ジョコビッチやナダル、アンディ・マレー(イギリス)だけではないということである。ティームやニック・キリオス(オーストラリア)など、今、新しい勢力がぐんぐん成長しながら、爪を研ぎつつある。

 試合後、ティームは「自分のベストのテニスをすれば、僕は錦織を倒せる。誰だって倒せる。彼のようなトップ選手を倒すには、自分のベストのテニスをする必要があるが、今日の僕にはそれができていなかった」と、トップ全員に密やかに挑戦状をつきつけていた。  ところで、錦織は第2セット2-3のチェンジエンドの際に、股関節に違和感を覚え、メディカル・タイムアウトをとってコートの外に出ている。戻ってくるなり、ローマの観客たちが「雷光のよう」と表現したフォアハンドのダウン・ザ・ラインのエースを繰り出し、わずか30秒で自分のサービスをキープしたのだが、腿にアイシングをしながら会見場に現れた錦織は、気になる故障に関し、「たぶん2セット目の初めに痛みを感じたので、すぐテープをしてもらった。明日になってみないとわからない部分もある」とやや不安を残す発言をした。

 その上で、14日の対ジョコビッチ戦に視線を向けた錦織は、「先週のように、我慢しながらチャンスをみてアグレッシブにもプレーして、という展開がたぶんベストだと思うので、なるべくできるようにやりたい」と意欲を見せる。錦織は、前週のマドリッド準決勝でジョコビッチと対戦して(3-6 6-7(4)で敗退)、戦い方のヒントが薄っすらと見えた、としていた。

 「常に厳しい相手だけれど、先週いいプレーができているだけに、少し光は見えている。体調さえ戻れば、可能性のある試合ができるんじゃないかと思う」と錦織は言う。2週連続の挑戦は、あと数時間の後にやってくる。

【男子シングルス準決勝】※[ ]数字はシード順位

ノバク・ジョコビッチ(セルビア)[1] vs 錦織圭(日清食品)[6]

ルカ・プイユ(フランス)vs アンディ・マレー(イギリス)[2]

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)