11月19日に行なわれるGIマイルCS(京都・芝1600m)は、実力伯仲の混戦模様だ。 春のGI安田記念(6月4日/東京・芝1600m)を制したサトノアラジン(牡6歳)をはじめ、昨年2着のイスラボニータ(牡6歳)、GIスプリンターズS…

 11月19日に行なわれるGIマイルCS(京都・芝1600m)は、実力伯仲の混戦模様だ。

 春のGI安田記念(6月4日/東京・芝1600m)を制したサトノアラジン(牡6歳)をはじめ、昨年2着のイスラボニータ(牡6歳)、GIスプリンターズS(10月1日/中山・芝1200m)で連覇を遂げたレッドファルクス(牡6歳)に、前哨戦となるGIII富士S(10月21日/東京・芝1600m)を快勝したエアスピネル(牡4歳)や、GIIスワンS(10月28日/京都・芝1400m)を勝って4連勝を飾ったサングレーザー(牡3歳)など、有力馬は枚挙にいとまがない。

 ただし、それら有力馬も絶対視できるわけではない。それぞれ、何かしらの不安を抱えているからだ。

 サトノアラジンは、前走のGI天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)で18着と惨敗。苦手な極悪馬場とはいえ、負けすぎの感は否めない。

 レッドファルクスは、やはり1200m戦がベスト。今春の安田記念では3着に入ったものの、得意の左回りだったことが大きい。右回りのマイル戦となると、全幅の信頼は置けない。

 イスラボニータやエアスピネルは安定感こそあるものの、その分、決め手に欠ける面がある。イスラボニータも3年前の皐月賞以降は、大舞台での勝利がない。ともに、GIではあと一歩足りないところが気になる。

 サングレーザーも4連勝の勢いは買うが、初のGIでどこまで……。

 こうなると、混戦を突いて台頭する穴馬狙いのほうが、馬券的には妙味がある。ならば今回も、過去10年の結果を振り返って、今年のレースで激走しそうな伏兵馬を探し出してみたい。

 ここ10年の勝ち馬で最も大きな波乱を起こしたのは、2010年のエーシンフォワード。春のGI高松宮記念(中京・芝1200m)で3着という実績がありながら、その後の成績がパッとせず、マイルCSでは13番人気まで評価を落としていた。

 また、2008年に3着に入ったファイングレインも同様だ。春の高松宮記念の優勝馬でありながら、その後の3戦が振るわず、距離不安も囁かれて、10番人気の低評価だった。

 ということは、同年のGIで好結果を残しながら、以降のレースで敗戦を重ねて人気を落とす馬が狙い目となる。

 今年、それに当てはまりそうなのは、レーヌミノル(牝3歳)だ。

 今春の桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)を制した、正真正銘のGI馬である。しかしその後は、GIオークス(5月21日/東京・芝2400m)で13着、GIIローズS(9月17日/阪神・芝1800m)で9着、前走のGI秋華賞(10月15日/京都・芝2000m)で14着と、惨敗を繰り返している。

 もはや人気急落は必至な状況だが、敗れた過去3戦はやはり距離が長かった、という見方もできる。適距離のマイル戦に戻れば、一発あってもおかしくない。

 他に波乱を演出した最近の勝ち馬と言えば、2014年に8番人気で勝利したダノンシャークがいる。同馬も、前年の安田記念とマイルCSでともに3着と好走していながら、近走の不振で人気を落としたタイプだ。とりわけ、直前の富士Sで1番人気に推されながら7着と惨敗したことが、人気急降下の原因となった。

 2009年に14番人気で2着に突っ込んできたマイネルファルケも、その春にはGIIIで2着と奮闘し、2走前の1600万条件を快勝したものの、前走の富士Sで9着(5番人気)と大敗。それによって、評価がグンと下がってしまった。

 これらの例を見てもわかるとおり、マイルCSでは富士Sで人気を裏切った馬が、人気を落として巻き返すパターンが多いのだ。

 今年で言えば、ピッタリなのはグランシルク(牡5歳)である。



富士Sからの巻き返しが期待されるグランシルク

 オープン特別や重賞レースで常に好走してきた同馬は、2走前のGIII京成杯AH(9月10日/中山・芝1600m)で、ついに重賞初勝利を飾った。だが、続く前走の富士Sでは3番人気の支持を得ながら、見せ場なく9着と馬群に沈んだ。

 そのため、GIでメンバーの質も上がる今回は一気に人気を落としそうだが、前走は”特殊な”不良馬場に泣いた印象が強い。心機一転のここでは大混戦の中、堅実な走りを武器にして上位に食い込む可能性は大いにある。

 ここまで見てきたように、近走の不振で人気を落とした実績馬が逆襲を果たすことが多いマイルCSだが、反対に上り調子にありながら、大舞台での層の厚さから人気が上がらなかった伏兵馬の台頭もしばしば見られる。

 昨年、3着となったネオリアリズムがいい例だ。前年の末に1600万下を卒業し、年明けから重賞戦線で奮闘。重賞挑戦2戦目のGIII小倉大賞典(小倉・芝1800m)で3着と健闘し、重賞挑戦4戦目となる前走のGII札幌記念(札幌・芝2000)では「マイル王」モーリスを退けて快勝していながら、7番人気の評価にとどまっていた。

 2011年に11番人気で2着に入線したフィフスペトルも、同年6月にオープン特別を勝って、休み明けの京成杯AHで重賞制覇。その後、GIスプリンターズSでも6着と踏ん張ったものの、歴戦のマイラーが集うマイルCSの舞台でふた桁人気の低評価に甘んじた。

 そして今年のメンバーから、好調ながら人気しそうもない馬を探してみると、1頭の馬に目が止まった。ウインガニオン(牡5歳)である。

 この春、オープン特別の谷川岳S(4月30日/新潟・芝1600m)を勝つと、続くオープン特別のパラダイスS(6月25日/東京・芝1400m)、GIII中京記念(7月23日/中京・芝1600m)と怒涛の3連勝を飾った。

 その後、前走のGIII関屋記念(8月13日/新潟・芝1600m)でも2着。勝ち馬マルターズアポジーにはうまく逃げ切られてしまったが、改めてこの馬の好調ぶりを示す結果だった。

 中京記念や関屋記念でも5番人気、4番人気にとどまり、GIとなる今回はなおさら人気上昇の気配はない。だが、今の勢いからして、ファンをあっと言わせる驚きの走りを見せても不思議ではない。

 群雄が割拠する秋の「マイル王決定戦」は、どんな結末になるのか。期待するのはもちろん、これら穴馬が演出する大波乱である。