「キャリアを始めたクラブで引退したい」。今季限りで現役を退くサッカーJ2ヴァンフォーレ(VF)甲府のMF柏好文選手(3…
「キャリアを始めたクラブで引退したい」。今季限りで現役を退くサッカーJ2ヴァンフォーレ(VF)甲府のMF柏好文選手(38)が引退記者会見を行った。サンフレッチェ広島から今季、古巣のVF甲府に戻ったが、1月に難病を発症。11月のホーム最終戦に出場し、サポーターから大きな拍手で迎えられたばかりだった。
会見は13日に甲府市内で行われた。柏選手は計5年在籍したVF甲府で印象に残った試合に、現役最後の2試合を挙げた。
11月23日のホーム最終戦で後半途中からピッチに入った。この日一番の拍手と歓声が沸いたことを「忘れることはない」と振り返った。
一方、11月29日のアウェーでの今季最終戦はベンチ入りしながら出場がかなわなかった。ただ、「チームメートが、(不出場を)自分のことのように悔しがってくれたのがうれしかった」と話した。
柏選手は山梨県富士川町出身。サッカーの名門韮崎高で頭角を現し、国士舘大に進んだ。2010年にVF甲府に加入し、12年のJ2優勝とJ1昇格に大きく貢献した。14年に広島に移籍し、主力選手として15年にはJ1優勝を経験した。
「J1での経験を若手に伝えたい」との意欲に燃え、11年間プレーした広島から今季、プロデビューしたVF甲府に戻った。だが、リーグ開幕前の1月、視力が低下する「フォークト・小柳・原田病」と診断され、長期の闘病とリハビリを余儀なくされた。
リハビリを経て体調を「万全の状態」に戻したが、厳しい現実が待っていた。クラブから来季の契約を結ばないことを伝えられた。「クラブから契約がないことを聞き、すぐに引退を決断した」。柏選手は会見でそう語った。
自身の今後については「サッカー界に恩返ししたい気持ちはあるが、ゆっくり考えていきたい」。VF甲府で戦う選手たちには「もっとギラついて、チャレンジしていい。野心や欲を持つことが結果や将来につながる」と激励した。
母校の韮崎高は今年、全国高校サッカー選手権の県大会で準優勝し、17年ぶりの全国出場まであと一歩に迫った。柏選手は「韮崎の緑のユニホームが、正月に全国を騒がせるようになってほしい」と夢を託した。(三宅範和)