第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)で継続中としては最長の21年連続シード権(10位以内)獲得を狙う東洋大のキーマン…

 第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)で継続中としては最長の21年連続シード権(10位以内)獲得を狙う東洋大のキーマンは、内堀勇(2年)だ。前回7区12位だった成長株は今回、6区出陣を熱望する。山梨・甲府市立城南中時代、ともに全国都道府県対抗男子駅伝に出場した兄の柊(しゅう)さん(21)、ハイレベルな市民ランナーの両親のランニング一家で育った内堀が、家族の期待を力に変えて箱根の山を下る。

 腰高のダイナミックなフォームは、山下りで快走を予感させる。「中学生の頃、陸上のほかにトレイルラン(山道レース)もやっていました。下り坂が大好きで得意です。6区を走りたい」と内堀は意欲を示した。

 1~3年時に6区を走った西村真周(4年)は今回、往路の主要区間を担うことが濃厚。酒井俊幸監督(49)は「前回、内堀は6区の控えで当日変更で7区に回った珍しいパターンでした」と明かす。今回は本人の希望通り、6区出陣の可能性が高い。

 1歳年上の兄・柊さんと共に中学生時代から将来を期待されたランナーだった。20年の全国都道府県対抗男子駅伝。山梨県の中学生区間(2、6区)を任されたのは内堀兄弟だった。当時、ナイキの厚底シューズが席巻し始めていた。「それまでレースシューズは1万円台でしたが、約3万円もしました。一足だけ、父(昭さん、49)が買ってくれました」と内堀は笑顔で振り返る。

 サイズは同じ27センチ。弟の勇が2区を走り終わった後、昭さんが厚底シューズを抱えて6区で待つ兄の柊さんへ走って届けた。第2中継所から第5中継所までは約2キロ。2区のゴール後、6区のスタートまで約1時間の余裕があるが、準備を考えれば、なるべく早く届けたい。「交通規制があるので私が走って届けることが一番確実でした」。トップレベルの市民ランナーの昭さんは“もうひとつの駅伝”を楽しそうに語った。

 柊さんも箱根を目指して関東の大学に進学したが、今は陸上部を退部し、学生の市民ランナーになった。かつて同じシューズを履いて一本のタスキをつないだ兄、そのシューズを走って運んでくれた父。いつも、山梨から応援してくれる母と妹。内堀は家族の思いを胸に箱根に向かう。

 「チームのために今西駿介さんの東洋大記録(20年、57分34秒)を狙いたい」と大会歴代3位の好記録を目標に掲げる。内堀が有言実行の激走をすれば、東洋大の21年連続シード、さらには目標の5位以内が近づくはずだ。(竹内 達朗)

 ◆内堀 勇(うちぼり・ゆう)2005年11月26日、山梨・甲府市生まれ。20歳。甲府市立城南中2年時の20年全国都道府県男子駅伝2区(3キロ)で8分46秒で区間24位。巨摩高3年時の23年全国高校総体5000メートルで決勝に進出し16位。24年に東洋大総合情報学部に入学。学生3大駅伝は1年箱根7区12位、2年出雲2区9位。ハーフマラソンの自己ベスト記録1時間2分46秒。167センチ、57キロ。

 ◆東洋大 1927年創部。箱根駅伝は33年に初出場。2009年に初制覇まで歴代優勝チームで最長の76年を要した。優勝4回(09、10、12、14年)。出雲駅伝は11年、全日本大学駅伝は15年に優勝。練習拠点は埼玉・川越市。タスキの色は鉄紺。長距離部員は41人、学生スタッフ6人。主な陸上部OBは「2代目・山の神」柏原竜二氏、100メートル元日本記録保持者の桐生祥秀(日本生命)、1万メートル元日本記録保持者の相沢晃(旭化成)ら。