女子ゴルフの河本結(27)=RICOH=の、プロとしての8年目が終わった。2勝を挙げ、メルセデス・ランキング3位。トッ…

 女子ゴルフの河本結(27)=RICOH=の、プロとしての8年目が終わった。2勝を挙げ、メルセデス・ランキング3位。トップ10入り14度、うち9度が3位以内。獲得賞金も初めて1億円を超えて2位など、キャリアハイのシーズンだった。一方で、目標として公言していた年間女王は、来季以降に持ち越された。女子ゴルフ界屈指の人気プロの独占取材を通じて明かされた今季、来季そして未来へと描く“河本結像”を記す。

 河本は今季を「満足度は100%」と言い切った。同時に「うぬぼれていた」という反省も口をついた。一見、矛盾にも思える物言いだが、それぞれを丁寧にひもとけば、一貫した姿勢が浮かんでくる。

 「ゴルフにずっと向き合ってやることができました。不要なものは制限したり、必要なことを勉強したり、すべてゴルフのためという過ごし方としては、間違ったものはなかった。走りきることができました」。

 プロゴルファーとしてあるべき姿を1年間、貫くことができた。それは例年、心がけていることだが今季はより一層「自己肯定できる部分が多かったと思います」。それが、やり切った満足感につながった。

 一方で「うぬぼれていた」という反省は、どこから来るのか。ゴルファーの指標としてスタッツ(各種成績)が残される。ほとんどの部門で上位におり、技術の高さが示されているが、河本は「ゴルフは、伸びた部分もあるけど、うまくなってないかな」という。

 一例を挙げる。パーオンホールでの平均パット数は今季1・7541で1位だった。「でも去年と比べてみると、伸びてない」。昨年は1・7536と今季よりわずかに数字がいいが、順位は5位。河本は、こういうところを見ていた。

 今季、竹田麗央、山下美夢有、岩井姉妹ら昨年のランキング上位者を中心に、13人が米ツアーを主戦場とする図式が生まれた。「そのメンバーが抜けたところで(上位にいられる)居心地の良さに慣れちゃダメだな、と」。

 全力でゴルフに向き合った。成績も良かった。しかし、米ツアーメンバーがいない環境下においては、断トツであって初めて、ゴルフの進化も感じられる。そこの両立があれば、満足度はさらに高まるはずだ。

 向き合う姿勢を継続しつつ、進化を実感するために課題を挙げるなら「今のゴルフをさらに鋭くしていく。平均ストロークを重視して、パーオン率を上げて、平均パット数も上げる」という技術の部分。それに加え、今季は「風邪をひいて体調を悪くしたり棄権したりが多かった。そこのスケジューリングをもっとうまくしないと」という。

 それができて、迷わず口にした来季の「最低5勝。年間女王」という目標を達成したなら、それがゴールかと言えば、それはまだ“河本結のいち側面”でしかない。

 毎年60冊の読書をノルマとし、経済紙の電子版も購読している。著名人の来し方(こしかた)を熟読する。各ツアー、開幕前日が恒例となっているプロアマ戦を「そういう方に会うチャンス。楽しみにしているんです」という。「ゴルフと、人間性と。どちらかが劣っていたら、一流のゴルファーではないと思って、尊敬できる部分を頑張って取り込んでいこうとしています」。

 さらには音楽や絵画、写真など、アートに触れる時間も増やそうとしている。

 ゴルフと人格の双方がそろってこそ、河本の“使命”に説得力が生まれる。それは「次の世代につなげていくこと」だ。自身も宮里藍、上田桃子らの活躍をテレビで見て、憧れて、プロという世界に足を踏み入れた。注目度が高い黄金世代の一人でもあり「本当に感謝ですね」と、そこにいるからこその発信力が、河本にはありがたい。

 だからギャラリーが「私以外の選手を見る目的だったとしても、たまたま私を見かけたときにいいショットをしたり、失敗してもふてくされたしぐさをしなかったり、ファンサービスに努めたりということが、みんなのハッピーにつながるんじゃないかな」。そこからゴルフファンが増え、プロを目指す子供たちに刺激となることを望んでやまない。

 「ウエアも色彩心理学とか、勉強しているから『おしゃれですね』とか言われれば素直に『ありがとうございます』と言える。(加えて)カメラに向けてのポーズ、プレーを通じて感動、元気、やる気、笑顔につながっていけば」というスタイルを貫くことが、河本の軸だ。

 その先には「圧倒的な年間女王」が待っていると信じる。そしてその先、「まだ秘密ですけど」。どうやら、心が躍るようなプランに『人間・河本結』が乗り出すようだ。

 ◇河本 結(かわもと・ゆい)1998年8月29日生まれ、27歳。愛媛県松山市出身。163センチ、58キロ。5歳からゴルフを始め、松山聖陵を経て日体大在学時の2018年にプロテスト合格。同年下部ツアー獲得賞金1位。今季2勝などツアー通算4勝。今季のメルセデス・ランキングは3位。RICOH所属。