<カーリング:ミラノ・コルティナオリンピック(五輪)最終予選:日本6-5ノルウェー>◇10日(日本時間11日)◇プレーオ…
<カーリング:ミラノ・コルティナオリンピック(五輪)最終予選:日本6-5ノルウェー>◇10日(日本時間11日)◇プレーオフ(PO)◇カナダ・ケロウナ
【ケロウナ(カナダ)=飯岡大暉】カーリング女子日本代表(世界ランキング5位)のフォルティウスが五輪出場を決めた。2位で進出したプレーオフ(PO)第1戦で1位ノルウェー(同7位)に6-5で勝利。前日に1次リーグ最終戦で逆転負けした相手を破った。“カーママ”のスキップ吉村紗也香(33)は高校生から5度目の挑戦にして、念願の初舞台に到達。日本女子8大会連続出場を果たした。
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息子へ、ちょっと早い誕生日プレゼントを贈った。氷を降りた吉村は、母の顔をのぞかせた。「いい報告ができるのはすごくうれしい。帰ったら息子に会えるので『ママ、頑張ったよ』って言いたい」。“カーママ”が初の五輪を決めた。
前日敗れたノルウェーとのPO。後攻で迎えた5-5の最終第10エンド。相手のラストショットを顔をしかめて見守った。投球ミス。自分が投げる前に、白星が舞い込んだ。両手でブラシを掲げ「ほっとした気持ちが一番。そのあとうれしさがこみ上げてきた」。涙し、笑い、抱き合った。「緊張した。今日はご飯も全然喉を通らなくて。でも食べなくても死にはしない。」。重圧から解放された。
年を重ね、強くなった。初めて五輪に挑んだのは17歳。常呂高で10年バンクーバー大会への代表決定戦に出場した。札幌国際大、フォルティウスでも挑んでは散った。22年北京大会に向けた決定戦ではロコ・ソラーレに2連勝から3連敗。あと1歩で逃していた。23年12月。長男を出産した。産休から2カ月で氷上に復帰。守るものが増えた。
年間の半分以上は家を空ける生活。夫と義父母の力を借りる。今年9月からは2カ月の米国、カナダ遠征へ。11月に帰国して2週間だけ過ごし、またカナダへ。息子に「ママ行ってくるねって言ったら『はい、いってらっしゃい!』って。ドライな感じでした」と苦笑いだ。
それもでいつも支えてくれる。携帯の待ち受け画面に加え、今回はアクリルケースに写真を入れて持参。「お守り代わり」が大きな効果がもたらした。義父からはたびたび動画が届いた。言葉が増え、手遊びするなど成長を実感。「ほっこり、リラックスできる。周りの支えがあって戦えている」と感謝した。普段は、思い出させないためにテレビ電話はしない。ただ、この日だけは「電話で報告できたら」とほほ笑んだ。
12月14日、息子は2歳になる。誕生日の3日前、サプライズを届けた。自身は来年1月30日に34回目の誕生日。年を1つ重ねて五輪を迎える。女子決勝は2月22日。もちろん目指すは「金メダル」。自分に、だいぶ遅めの贈り物を届ける。
◆フォルティウス 11年4月に小笠原歩と船山弓枝(現コーチ)、吉田知那美(現ロコ・ソラーレ)、小野寺で「北海道銀行フォルティウス」結成。14年ソチ五輪5位。同年に吉田知が退団し、吉村、近江谷が加入。15年日本選手権初優勝。21年にスポンサー契約が終了し「フォルティウス」に。21年12月に小林、22年9月に小谷が入団。チーム名はラテン語で「より強く」。