第102回箱根駅伝で3年ぶりの王座奪還を狙う駒大の6区スペシャリスト・伊藤蒼唯(あおい、4年)は強さを増しラストイヤー…

 第102回箱根駅伝で3年ぶりの王座奪還を狙う駒大の6区スペシャリスト・伊藤蒼唯(あおい、4年)は強さを増しラストイヤーを迎える。山下りの6区を2度担ってきたが、今季は11月の全日本大学駅伝5区区間新の激走でチームを2年ぶり17度目の優勝に導くなどさらなる進化を遂げ、箱根は平地の主要区間を担う可能性も十分だ。元長距離選手だった父・桂太さんの思いも胸に始めた競技の大学集大成。実業団ステージへ勢いのつく箱根路にする。

 王座を奪う布陣はそろっている。駒大は11月末から12月初旬に、例年通り千葉・白子合宿でチームの状態を確認。順調に練習を消化した伊藤は「箱根に良い形で入れそう」と頼もしい言葉を口にした。1年時に箱根6区で学生3大駅伝区間賞デビューを飾り、3年時も区間2位。山下りのスペシャリストだが、今季は「6区以外でも区間賞争いができる」とチームのために全力を注ぐ覚悟。得意の山下りであれば「区間新を自分が出したい」と前回、青学大の野村昭夢(現住友電工)がマークした区間記録(56分47秒)更新も視野に入れた。

 最上級生の役割を、申し分なく果たしてきた。今季は6月に仙骨を故障し、夏は思うように練習が積めなかった。それでもラストイヤーの強い思いで駅伝シーズンに「急ピッチで仕上げた」。10月の出雲駅伝4区2位と好走し、11月の全日本大学駅伝は1位と35秒差の4位で受けると従来の記録を17秒更新する区間新記録(35分1秒)の快走を見せ約5キロで首位浮上、52秒差つけてつないだ。これまで3大駅伝を8回走り、区間2位は5回。1年時の箱根以来2回目の区間賞と大会MVPに「レベルが上がった」と自信がみなぎる。

 父・桂太さんは出雲市陸協の役員。山梨学院大のランナーだったが、3大駅伝とは無縁だった。「父が箱根駅伝を目指していたので、お正月はいつもテレビで箱根がついていた。競技を本格的にやり始めてからはいつか走ってみたいと思っていた」。父に憧れて始めた長距離で、いつしか夢を受け継いだ。「良いところを、最後にもう一回見せたい」。親子2代の夢、箱根に懸ける思いは人一倍強い。

 卒業後は強豪・富士通に進み、目標は「日本を代表するランナーになること」だ。次のステージへ勢いをつける最後の箱根路。「総合優勝して良い形で終わりたい。自分ができる最大限のことをして、チームの勢いをつけられるような走りがしたい」。3冠を達成した1年時以来の優勝で、笑顔のフィナーレを迎える。(手島 莉子)

 ◆伊藤 蒼唯(いとう・あおい)2004年1月12日、島根・出雲市生まれ。21歳。出雲工を経て駒大では1年時の箱根6区区間賞。2年時は出雲4区2位、全日本5区2位。3年時は出雲4区3位、全日本3区2位、箱根6区2位。4年時は4月の学生個人選手権1万メートル優勝。出雲4区2位、全日本5区区間新。170センチ、52キロ。

 〇…駒大の藤田監督は「自信を持った10人を登録できれば、総合優勝は見えてくる。なんとしても総合優勝を」と意気込んだ。実現に向けては「区間配置が重要」と語り「エース、山、つなぎ、全ての区間がかみ合わないと勝てない」と強調した。また出雲駅伝を欠場し、全日本駅伝で復帰したエース・佐藤圭汰(4年)の現在の状態について「特段問題ない」と語った。

 ◆駒大 1964年創部。箱根駅伝は67年に初出場して以降、連続して出場を続ける。総合優勝8回。全日本大学駅伝は優勝17回。出雲駅伝は優勝5回。2022年度に学生駅伝3冠を果たすなど歴代最多30冠を誇る。練習拠点は世田谷区。長距離部員は38人、学生スタッフ10人。タスキの色は藤色。主なOBは22、23年世界陸上代表の田沢廉(トヨタ自動車)、21年東京五輪マラソン代表の中村匠吾(富士通)ら。