今季のJ1は鹿島が9季ぶり9度目のリーグ制覇を成し遂げた。獲得タイトル数を21に伸ばし、リーグ最多を更新した。長いシー…
今季のJ1は鹿島が9季ぶり9度目のリーグ制覇を成し遂げた。獲得タイトル数を21に伸ばし、リーグ最多を更新した。長いシーズンを送る中で、名門復活の背景には選手たちの様々な「気づき」「自覚」があった。
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松村優太は、エウベルのプレーにヒントを得た。「ドリブルの時に、ずっと顔が上がっている。あれは(受け手の)味方が動きやすい」
今夏に加入したアタッカーはライバルでもあるが、同じドリブラーとして通じ合うものもあった。「ボールの持ち方は(自分の)課題なので」と、自らエウベルに歩み寄り、心得と技法を尋ねた。終盤戦で躍動した松村のドリブル中の顔は、上がっていた。
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田川亨介は吹っ切れた。序盤戦は、途中出場でブレーキとなることが多かった。ベンチからの要求に応えようとするあまり、頭がいっぱいいっぱいになっていた。首脳陣と対話を重ねた末、たどり着いた結論は「感覚でいく」だった。
「考えすぎていた。言い方があってるかわからないけど、感覚でいく」。国立競技場での川崎戦、味の素スタジアムでのFC東京戦、いずれも途中出場から自らのゴールで、勝ち点1の試合を3にした。
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「三竿」のマグネットが、左側に置かれていた。ダブルボランチの右側を本職としていた三竿だが、ある日の夏場の練習で、自分のマグネットが左側にあった。
特に説明があったわけではないというが「感触がよかったのでそこからずっと左です。右足で受けやすいというのもあるので」。左に“新境地”があった。小さな小さなコンバートだが、強みを発揮する試合が増えていった。
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舩橋佑は“常連”だった。鬼木監督は、試合明けに行われる反省ミーティングで、自作の12~15分ほどの映像を準備する。「この選択はよかった」「ここはこうするべきだった」など、約束事や意識付けをチームで共有する。
舩橋は、改善を求めるシーンの映像で登場することが多かったと明かす。しかしそれも、日の当たらない期間を乗り越えて、今季から主力の一員になったからこそ。背筋が伸びる感覚があった。「自分が1番わかっていることなので。当たり前のこととして、自分がやりたいプレーばかり」。厳しい要求も力に変えた。(岡島 智哉)