今季のJ1は鹿島が9季ぶり9度目のリーグ制覇を成し遂げた。獲得タイトル数を21に伸ばし、リーグ最多を更新した。* *…
今季のJ1は鹿島が9季ぶり9度目のリーグ制覇を成し遂げた。獲得タイトル数を21に伸ばし、リーグ最多を更新した。
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8日に発表された「Jリーグ優秀選手賞」に、鹿島DF小池龍太の名前があった。加入1年目、30試合に出場し1得点。こなしたポジションは実に5つ。右SB、左SB、ボランチ、右MF、左MF。出場時間2345分は、全試合先発の早川友基、植田直通、鈴木優磨の3人、得点王のレオセアラに続く、チームで5番目の数字だった。
膝の大怪我の影響もあって、横浜FM時代の23年シーズンは公式戦出場なし。24年シーズンに復活を遂げたものの、出場試合数は7にとどまった。契約満了という形での退団が決まった小池にすぐに声をかけたのが、鹿島だった。
JFLからキャリアをスタートさせ、J3、J2、J1とステップアップ。ベルギーでの海外経験もあれば、横浜FM時代のJ1制覇経験もあり、E―1選手権での日本代表経験もある。その唯一無二の経験値は、鬼木監督の下で再起を懸けていた鹿島というクラブにとって、必要不可欠なものだった。
「加入1年目の僕なんかは、気負うこともないのでリラックスしてやれれば。それが僕だったりレオ(セアラ)の役目。どうせ責任感とかプレッシャーは感じるもの。自分はそれを楽しむ覚悟です」
優勝争いの心得を問われた小池は、サラッと言ってのけた。鈴木優磨や植田直通、柴崎岳、三竿健斗など、タイトルを心の底から欲している選手は多くいる。不退転の覚悟で古巣復帰となった鬼木監督も、その部類だろう。小池はそこに同列にならず、一歩引いたところで「リラックスしてやる」ことが、自分の正しい立ち位置だと理解していた。そういう選手がいることが、優勝への近道だということも。
「サッカー選手である以上、いろいろなものを犠牲にしていると思うけど、それが報われたなって思えるのって、やっぱりタイトルを取ることだけなので。応援している人も、タダで来ているわけじゃない。熱量を持って応援してくれる人たちが報われるためにも、勝つ必要がある」
前4枚の連係が怪しいとなれば、右MFで攻撃とプレスのハンドルを握った。諸刃の剣でもあったエウベルの補佐役として、猛獣使い枠で左SBに入った。クレバーな一面もあるが、対人守備はとことん強く、置き去りにされるようなシーンは思い浮かばない。かゆいところに手が届く存在として、チームに欠かせない戦力となった。
試合後、足を引きずりながらミックスゾーン(取材エリア)に現れることもしばしばだった。2年間でわずか7試合しか出ていなかった選手にとって、春先の1か月間の離脱期間を除いてほぼシーズンをフル稼働したことは負担も大きかったはずだ。それでも小池は身を粉にして、一歩引いたところから鹿島の躍進を支え続けた。(岡島 智哉)
◆小池 龍太(こいけ・りゅうた) 1995年8月29日、東京・八王子市生まれ。30歳。JFAアカデミー福島から14年にJFLの山口に加入し、同年のJ3昇格、翌年のJ2昇格に貢献。17年にJ1柏入りし、ベルギー移籍を経て、20~24年まで横浜FM。代表通算2試合出場。浦和MF中島翔哉はいとこ。