今季のJ1は鹿島が9季ぶり9度目のリーグ制覇を成し遂げた。獲得タイトル数を21に伸ばし、リーグ最多を更新した。* *…
今季のJ1は鹿島が9季ぶり9度目のリーグ制覇を成し遂げた。獲得タイトル数を21に伸ばし、リーグ最多を更新した。
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近年のJリーグは、「欧州でプレーする日本人選手」を獲得する力が、極めて重要視される時代になった。
高校や大学など、新卒選手のリクルート活動も当然重要。さらに今季の鹿島で言えば小池龍太やレオセアラなど、他の国内クラブからの加入選手も当然、チーム力を高める上で欠かせない。
一方で、毎年何人もの若手選手が欧州に渡る時代になったが、欧州に行った選手の大半はいずれJリーグに戻ってくる。計算が立ち、欧州での経験をチームに還元してくれる日本人選手を獲得できるクラブ力があるかどうかは、チーム順位を大きく左右するようになった。
今季の鹿島で言えば、鹿島から欧州に巣立ち、国内復帰クラブとして鹿島に戻ることを選んだ選手が5人(安西幸輝、植田直通、三竿健斗、柴崎岳、鈴木優磨)。これまで鹿島とは縁がなかったが、復帰先として鹿島を選択した選手が2人(小川諒也、田川亨介)。欧州の地で揉まれた彼らの経験値は、チームにとっての財産となった。
当然、選手側とクラブ側、双方のタイミングが合致しなければ、復帰(加入)は実現しない。ポジションバランスや金銭事情など、選手の復帰(加入)したいという思いだけでは、実現に至らないこともある。
しかし、かつては外国人選手にのみ求めていた経験値や、ある種の理不尽さも、欧州でプレーする日本人選手で代用できる時代になった。23、24年シーズンを連覇した神戸、今季の鹿島を鑑みても、欧州から日本復帰を画策する選手に「選ばれるクラブ」であることは、Jリーグを勝ち抜く上で欠かせない条件になりつつある。
鈴木優磨は優勝後、涙を見せた理由について「鹿島が苦しんでいるのを見て、何とか勝たせたい、優勝させたいという思いで(欧州から)帰ってきた選手の思い、努力を知っていたので」と明かし、柴崎、植田、三竿、安西の名前を挙げた。実力だけでなく、クラブへの「想い」を持つ選手たちの存在は、鹿島の復権Vに欠かせなかった。
欧州移籍が相次いだ時代においても「選ばれるクラブ」として、財政力やブランド力含め、クラブの価値を維持し続けていたことは大きかったと言える。また、復帰組に関しては「戻ってきたい」と思わせるだけの価値、いわば“愛”を在籍時代に示していたからこそ、という側面もあっただろう。(岡島 智哉)