◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」 11月のフィギュアスケートNHK杯は忘れられない大会になった。2018年平昌五輪銅…
◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
11月のフィギュアスケートNHK杯は忘れられない大会になった。2018年平昌五輪銅メダルのアイスダンスカップルが、8季ぶりにリンクに帰ってきた。日系人兄妹のマイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組(米国)は、妹・マイアが腎臓がんを乗り越え、「ここに戻って来られたことは一生の思い出」と演技後に大粒の涙を流した。
1番滑走で臨んだリズムダンスはヒップホップ調の音楽で会場を盛り上げた。「チーム澁谷」「澁谷兄弟」と書かれた衣装を着用。右腕には「777」とつけ、アレックスは「試合をできていることがジャックポット(大当たり)」と、キャリアになぞらえた深い意味が込められていると語った。
フリーダンスは15~16年シーズンに使用した「フィックス・ユー」を演じた。構成は大きく変わっているものの、15年のNHK杯を制した際のプログラムを日本で復活させた。復帰戦6位に観客は総立ち。報道陣からも「感動した」といった声が相次いだ。
マイアは病の完治を強調した。療養当時は回復が遅れ、苦しい時間が多かったという。苦難を経て兄とスケートを楽しみ、「氷の上に立ったことで人生をさらに愛せるようになった」。来年2月のミラノ・コルティナ五輪は出場を目指さないという。実績があるからこそ、高いレベルが要求されることを熟知する2人ならではの決断のように見えた。「これからも一歩ずつ、自分たちのできることをやりたい」とアレックス。動き出したシブタニ兄妹の第二章に注目したい。(五輪担当・富張 萌黄)
◆富張 萌黄(とみはり・もえぎ)2020年入社。レイアウト、ゴルフ担当を経て5月から現職。