働く女性が結婚・出産をへて子育てをしながら働き続けることが当たり前になってきた昨今。俳優・妻夫木聡が主演のTBS系日曜…

 働く女性が結婚・出産をへて子育てをしながら働き続けることが当たり前になってきた昨今。俳優・妻夫木聡が主演のTBS系日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」(日曜・午後9時)でも脚光を浴びる競馬業界でも、騎手をはじめ女性の就業者は年々増えている。国内の女性騎手で歴代最多の通算1382勝を挙げ先月引退した宮下瞳さんは、女性騎手の先駆けとして結婚・出産をへて、子育てをしながら約30年間、競馬業界に携わってきた。引退会見では、出産や結婚をへて騎手として働くことについて言及した。

 宮下さんは95年に騎手としてデビュー。小山信行騎手=当時=と結婚後、11年に一度は引退し、2人の男児を出産。妻として家族を支えてきたが、15年10月に名古屋競馬で厩務員として復帰し、16年の騎手免許試験に合格した。ママさんジョッキーとして復帰した当時、長男・優心(ゆうしん)くんは4歳、次男・健心(けんしん)くんは1歳。復職を決めたきっかけとして「私が馬に乗っている写真を息子(優心くん)が見て『これ誰?』と言ってきて。『ママだよ。お馬さんに乗っていたんだよ』と言うと『優心も見てみたい。ママが走ったら応援してあげるよ』と言ってくれました。そこから復帰を真剣に考え始めました」「周りの方はみんな驚いていました。最初に旦那に相談した時もびっくりしていました。旦那は私のことを一番分かってくれていて、一番頼れる存在です。『子供がいるからやめた方がいい』と言うと思っていたのですが『いいんじゃない。頑張って』と言ってくれ、逆に私が驚きました」と16年騎手復帰時に行ったスポーツ報知のインタビューで話している。それ以来、周囲の協力もありつつ、仕事の時間以外は育児と家事をこなしてきた。

 最初の騎手デビューから30年。騎手人生を振り返り「私にとって、人生でかけがえのないものだったと思います。一度やめて復帰すると思っていませんでした。復帰したときに名古屋競馬場をはじめ、家族、関係者の方々がすごくサポートしてくださったおかげで、素晴らしい騎手人生が送れたと思います」「周りの方々に自分は恵まれていて、仕事を毎日、楽しくさせてもらうことができました」と周囲への感謝を口にした宮下さん。

 結婚、出産など女性としての人生のライフイベントがあったなかで、騎手として頑張ることの難しさは感じたか-という質問には、「騎手なので、勝たなければ何も意味がないというか。勝ってこそ騎手であり、勝たないと認められません。悩む時期もたくさんありましたけど、私の場合は出産して子どもたちのために頑張ろうと。子どもたちの応援があるから、頑張れた自分がいました」と子供の存在が力になったと話した。

 今後、競馬業界で女性が活躍していくためには何が必要なのか?「一般社会だと産休が認められていますけど、競馬の世界では認められていません。産休があると、今の女性ジョッキーが出産しても戻りやすいのかなと思います。そういう体制を私がサポートして、広げていける部分があるといいなと思っています。自分が今から厩舎を持つうえで、女性厩務員さんを入れる機会を増やしたいです。女性ならではの馬との接し方、女性特有の優しさを、競馬や厩務員の仕事に生かしていけたらと思っています」「今は女性騎手が同等に戦えると思います。JRAの女性騎手も増えてきて、活躍している姿を見ると、そう感じます」とした。

 宮下さんは11月26日、名古屋競馬場で現役最後のレースを終え、引退セレモニーが行われた。20日に令和7年度第2回調教師免許試験に合格したことがNAR(地方競馬全国協会)から発表され、12月1日付で調教師に転身。現在は開業に向け、船橋競馬場で研修中。高知競馬場でも研修を行う予定となっている。