◆報知プレミアムボクシング▽ニューヒーロー第7回 WBA世界ライトフライ級2位・吉良大弥 昨年6月にプロデビューした3戦…
◆報知プレミアムボクシング▽ニューヒーロー第7回 WBA世界ライトフライ級2位・吉良大弥
昨年6月にプロデビューした3戦全勝(2KO)の吉良大弥(22)=志成=が、12月31日に大田区総合体育館でWBA世界ライトフライ級7位イバン・ガルシア・バルデラス(24)メキシコ=とWBA世界同級挑戦者決定戦を行う。プロ4戦目で訪れたチャンスに目を輝かせるホープは、勝って世界挑戦に進むことを宣言。プロ入りからボクシングスタイルに悩みを抱え、試行錯誤を繰り返し「ようやく自分なりの答えが出た。子供から大人に成長した感じ」という。大みそかのリングでひと皮むけた姿を披露し、世界へ名乗りをあげる。
デビューからわずか4戦目で巡ってきたチャンス。「まだ早い」という周囲の声も聞こえてくるが、吉良はそんな声をあざ笑うかのように言った。
「自分では予定していたこと。時期的にはちょうどいい」
プロのリングに立ってまだ1年半にも満たない。デビュー戦、2戦目はともに初回KO勝ち。5月の3戦目は世界ランカーのジャクソン・サパタ(ベネズエラ)から2度のダウンを奪い大差の判定勝ちと、スピード、パンチのキレで勝負を挑み圧倒してきた。
奈良・王寺工高から東農大というアマのエリートコースを歩み、2年で中退してプロ入り。3連勝と順調に世界への道を進んでいる印象を受けるが、本人は日々悩み続けていた。「プロになってほぼ毎日、悩んでいた。ボクシングの基礎や常識が、自分の理解しているものとは違っていた」という。足の位置、重心、体重の乗り具合。どれも基本中の基本だが、「間違ったままリングに上がっていた」とショックだった。
色々な場所で自分なりに答え合わせをする日々が続いた。ジムで教わること、そして海外キャンプに行けば、また違うことを教え込まれた。「どちらも正解だと思いますが、日米のものをミックスしたりもしてみた。自分には何が合うのか、自問自答していた」と出口の見えないトンネルでもがき続けていた。「教えられたことをその通りにやらなければと思い込む自分がいて、でも自分のやりたいようにしたいと思うもうひとりの自分もいる」という葛藤から、ボクシングが中途半端になっていった。
ようやく光が見え始めた。それは技術うんぬんではないということも分かった。
「教えられたことに対して、応えないといけないという気持ちが過剰になりすぎていた。教えてもらったものは、自分のボクシングの材料のひとつでしかないのだから、最終的には全部自分で決めて、自分で責任を負わなければいけないという答えにたどり着いた。子供から大人に成長した気分」
メンタル面のいい意味での開き直りがすべてをプラスの方向に導いた。気持ちの変化は、スパーでの鋭い動きにも直結した。5月のサパタ戦はまだ暗闇の中での試合だった。それだけに、大みそかのリングでどう成長しているのか、自身も楽しみで仕方がない。
挑戦者決定戦でグラブを交えるバルデラスは、ボクシング大国メキシコ出身の選手。吉良は「アマ時代からメキシカンとの対戦経験は一度もない。(メキシコ人は)パンチを思い切り振ってくるのでやりづらそう」と警戒するが、自信はある。気の早い話にはなるが、大みそかの戦いをクリアすれば、世界挑戦権を獲得する。現在WBAは7月に王座を獲得した高見亨介(帝拳)が王者として君臨。その高見は今月17日(両国国技館)にWBO王者レネ・サンティアゴ(プエルトリコ)と統一戦を行う。高見は勝ってフライ級への転向を明言しているだけに、今後の対戦は不透明だが、アマ時代には3度戦い、すべて負けている。
「高見さんは対戦したことはありますが、1学年上なので一度も話したことはないんです。今は特別に試合がしたいという思いはありませんが、その時がくれば過去の対戦もあるので盛り上がると思います」
大みそかの試合は前回同様にジムの先輩・井岡一翔の前座として登場する。「5月の試合は脇役感があったが、今回は自分のボクシングを見せて『この興行で吉良の試合が一番面白かった』と言われるような試合をしたい」とセミファイナルから主役の座を勝ち取る気でいる。そして、22歳のホープはこう締めくくった。
「世界挑戦権は必ず取ります。自分の中では、世界チャンピオンになってからがプロとしての本当のスタートですから」(近藤 英一)
◆吉良 大弥(きら・だいや)2003年5月30日、大阪府大阪市生まれ。4歳からキックボクシングを始め、中学1年でボクシングに専念。奈良・王寺工高で選抜、インターハイを制覇。その後、東農大に進み1年からレギュラーとして活躍するが、パリ五輪予選に敗れ2年で中退。24年6月にB級(6回戦)でプロデビュー。プロ戦績は3戦全勝(2KO)。身長160センチの右ボクサーファイター。