先人の「本気」をパワーに-。阪神藤川球児監督(45)が8日、甲子園歴史館を訪れ、4日から一般公開された「藤村富美男監督退…

先人の「本気」をパワーに-。阪神藤川球児監督(45)が8日、甲子園歴史館を訪れ、4日から一般公開された「藤村富美男監督退陣要求書」を見学した。

当時阪神監督だった藤村富美男に対し、主力の金田正泰を中心とした選手らが解任を求めた連判状。歴史を物語る1枚の紙は、ガラスケースの中で存在感を放っていた。「みんな本気だった。本気じゃなきゃだめなんですよね」。先達の思いが込められた文字から、言い知れぬパワーを感じ取った。

大先輩たちがぶつかり合ったのは、真剣に戦っていたからこそ。その証拠を直接目にし、今の組織にも必要なものだと再認識した。「こんな時代だからこそ、本気でぶつかり合える仲間、それから切磋琢磨(せっさたくま)をし合う関係性というのは、チームを勝たせることにつながります。時には壊れてしまうこともあると思うんですけど、そのギリギリをいかなければ勝つことはできない」

藤村監督は騒動の後も続投。翌年に解任されるまで責務を全うした。「藤村さんもやめなかったんですよね。やりきらないと。素晴らしいですね」。2リーグ制後、球団初の連覇を目指す来季へ。歴史を振り返るうち、覚悟は強くなった。

今月10日で球団創設90年。令和の指揮官として歴史を語り、つなぐ使命も感じている。「タイガースの素晴らしさを、また優勝することができましたから、いい報告とともに次につなげるというのは、今は僕がやらなければというのがあります」。本気を受け継ぎ、次世代のチームに伝えていく。【磯綾乃】

◆藤村富美男監督排斥事件 阪神90年の歴史で「最大のお家騒動」とされる。初代ミスタータイガース藤村監督1年目の56年、ベテラン金田正泰、田宮謙次郎らが藤村監督に不満の矛先を向け、11月上旬、金田の自宅に選手が集まり、藤村監督の退陣要求書を作成。吉田義男、小山正明ら若手も巻き込み、同20日付で野田誠三オーナーに提出した。12月4日、球団は監督続投と金田の解雇を発表。排斥派は反発を強めたが、同25日に金田との再契約が発表されたことで態度を軟化。藤村監督の続投をのんで52日間の抗争は収束した。