◆第77回阪神JF・G1(12月14日、阪神競馬場・芝1600メートル) 数々の名勝負の記憶が脳裏に焼き付いている。来春…
◆第77回阪神JF・G1(12月14日、阪神競馬場・芝1600メートル)
数々の名勝負の記憶が脳裏に焼き付いている。来春に定年引退が控えている国枝調教師は、ヒズマスターピースを送り込む最後の阪神JFはちょうど10度目の挑戦となる。過去に2勝、2着3回と好成績を収めており、勝てば牝馬限定G1勝利数12勝で並ぶ松田博資元調教師を抜き去り、歴代単独最多となる。「あとは記録のことを言えば、マツパクさんと並んでいる数字くらいか」と、静かに闘志を燃やす。
新馬戦こそ6着に敗れたが、距離を短縮してスピードを生かせた2戦目で初勝利を挙げた。続く赤松賞も逃げ切って2連勝を飾り、この臨戦過程は09年に勝利した後の牝馬3冠馬アパパネと重なる。「アパパネとタイプは違うけど、この馬は体が大きくても筋肉がいいのか弾みがいい。前向きだけど暴走するわけではなく、気になるところはないね」と素材とセンスの良さに期待を込める。
担当の町田厩務員は、90年開業の国枝厩舎で30年以上も働いてきたベテラン。99年のスプリンターズSで厩舎にG1初勝利をもたらしたブラックホークも担当していた。「あの馬は大物感がありましたよね」と思い出を口にしつつ、「ヒズマスターピースは最初は体を絞るのに苦労したけど、使いつつ絞れてきたのがいいです」と、気配の良さを語る。
阪神JFで喜びも悔しさも味わってきた国枝師にとって、やはり強く印象に残っているのは力強く差し切った名牝の姿という。「一番はアパパネかな。未勝利を勝った時点で赤松賞、阪神JFと決めていて、自信があった」と大きくうなずく。28年ぶりにJRA重賞勝ち馬不在の混戦ムードが漂うなか、名伯楽の経験値がものを言う。
(坂本 達洋)