今季のJ1は、鹿島が9シーズンぶり9度目のJ1制覇を果たした。 最終節まで優勝を争った2位柏との勝ち点差は1。鹿島が1…

 今季のJ1は、鹿島が9シーズンぶり9度目のJ1制覇を果たした。

 最終節まで優勝を争った2位柏との勝ち点差は1。鹿島が1ポイント分の差をつけた「勝つ確率を1%でも高める」ための小さな変化の積み重ねを振り返る。

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 キックオフ直前、入場と写真撮影を終え、ピッチ中央へと歩み出す先発の選手に、ベンチの選手が水を差し出すようになった。今季中盤戦以降、定着したルーティーンだ。

 スタメン組は皆、一度ベンチ前に寄り、水を飲みながら控え組とコミュニケーションを取った後に、ピッチへと向かうようになった。

 これが勝敗に直結するようなことなのかはわからない。優勝に結びついたと断言するのには無理がある。しかし、選手が口々に「今年のチームの強みは一体感」と語ることにつながる話であり、途中から出てくる選手のモチベーションとパフォーマンスの高さに、無関係ではないのかもしれない。

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 トレーニングでも変化があった。選手が短いソックスを履かないようになった。これは監督発信のルール。鬼木監督によると「やめろとは言ってないですよ。『サッカーをやる格好で』『(すね当てを)付けないんだったら痛がるな』とは言いました」とのこと(ほぼ言っているようなものですが)。

 指揮官は「変な言い方ですが」と断りを入れた上で「(チームが)強い時って、何をやってもいいと思う。1人ひとりが自立していて。ただ、自分たちは今はそういう立場じゃないので」と意図を明かした。ホームの試合後も、これまではスタジアムで解散していたが、往路同様に全員が一度バスに乗り、クラブ施設に一度戻ってから解散することになった。

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 アウェーの試合で、コートチェンジを多用するようになった。相手にコートチェンジをされた試合で(ホーム京都戦)、ホーム無敗記録が途絶えたことがキッカケ。鹿島もアウェー戦において、相手のリズムを狂わせる目的で行うようになった。

 こういった小手先のテクニックのような戦法を、近年の鹿島は大々的にやってこなかった。しかもこの例は、言ってしまえば相手のやり方の“パクリ”でもある。しかし、勝利の確率を1%でも高めることを目指す上で、必ずしも“横綱相撲”が正解とは限らない。

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 鬼木監督は「少しでもサッカーの質や結束力が1%でも高まるのであれば、どんどんやっていこうとクラブには伝えているし、理解をもらっている」と明かす。

 「勝つ確率を1%でも高める」という小さな努力の積み重ねが、勝ち点1差での優勝に繋がった側面もあるのかもしれない。今季の鹿島は本当に、勝利に貪欲だった。(岡島 智哉)