柔道女子48キロ級のパリ五輪(オリンピック)金メダリスト、角田夏実(33=SBC湘南美容クリニック)が現役引退の意向を固…
柔道女子48キロ級のパリ五輪(オリンピック)金メダリスト、角田夏実(33=SBC湘南美容クリニック)が現役引退の意向を固めたことが7日、分かった。全日本柔道連盟(全柔連)関係者が明らかにした。年内を区切りとし、会見で表明したい考えがあるという。
今月20日に行われる、無差別級の女子日本一を決める来年4月の皇后杯全日本選手権につながる、関東選手権予選を兼ねた千葉県選手権にエントリーし、初戦で78キロ超級の大学生と対戦することが決まっていた。
この日、東京体育館で行われたグランドスラム(GS)東京のイベント後、大会参加について「ちょっと厳しいかなって思いながらも、希望を残しておきたい」と説明したが、数日前の稽古中、ぎっくり腰になったそうで流動的に。今後についても「今、会社と相談していて、そろそろ発表とか手続きをしているところ」とまでは言及していた。
近日中に所属と会見の日時など詳細を話し合い、全柔連にも強化選手の辞退届を提出する流れという。
小学校2年の時に父と柔道を始め、千葉・八千代高から国立の東京学芸大へ。社会人になってから全柔連の強化選手になった努力家で、昨年7月のパリ五輪に女子最年長31歳11カ月で初出場、金メダルに輝いた。
日本の夏季五輪通算500個目の節目で、大会の第1号。女子48キロ級では04年アテネ大会の谷亮子以来20年ぶりの王座、看板の奪還も果たして話題になった。
パリ五輪は、最終調整で痛めてたこともあり万全ではなかったが、圧勝した。畳を降りた直後の取材では「(延長戦に持ち込まれた)準決勝の後に『もっと練習して試合に挑みたかったな』と。『引退かな』と思ったけど、どうなるんだろう。ゆっくり休んで考えようかな」と話していたが、翌春の皇后杯に五輪メダリスト推薦枠で参戦した。
最も軽い階級から減量なしの53キロで出場し、異次元の2勝を挙げた。初戦で37キロ重い相手に勝ち、代名詞ともえ投げも2回戦で決めて突破するなど、驚異の3回戦進出で沸かせた。
「私って柔道が好きなんだな」。負けたが、笑顔。進退は保留していたが「柔道で追い込んでいる時が一番楽しい。このキツさ、充実感は引退したら味わえないと思うと寂しい。もうちょっと自問自答したい」と話し、異例の挑戦が、悩める胸中を複雑にしていた。
柔道家としては「好きな人」と表現する、ともえ投げを相棒に勝ち続けた。自宅に敷いた畳の上で関節技の遊びを始め、高校時代に父から教わった。通常、ともえ投げは左組みの場合、右足で相手の股関節を蹴るが、角田は左。これは講道館柔道の形(かた)と同じ古来からの技でもあった。
腕力も2階級上の63キロ級と渡り合えるほどで、ベンチプレス80キロは階級トップクラス。加えて女子では珍しい体脂肪率1桁台を誇る上、関節技の技術もあり、長身161センチの手足があった。21~23年の世界選手権3連覇も、パリ五輪と同様に全て一本勝ちで成し遂げた。近年最強クラスの柔道家が、遅咲きながら鮮烈に花開いた後、第一線から退く意向を固めた。