柏レイソルOBでリーグ初優勝した2011年のメンバー、JFLクリアソン新宿の北嶋秀朗監督(47)が、リカルド・ロドリゲス…

柏レイソルOBでリーグ初優勝した2011年のメンバー、JFLクリアソン新宿の北嶋秀朗監督(47)が、リカルド・ロドリゲス監督のもと今シーズン2位と躍進した古巣を称賛した。ポジショナルプレーでJ1を席巻した今季の柏。その強さをどう見たのか? 「ミスターレイソル」と呼ばれた元エースに聞いた。

【構成=佐藤隆志】

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リカルド監督のサッカーはとても魅力的です。自分たちが主導権を握りながらサッカーをしていくという、多くのチームが目指し、1回は試みたことがあるんじゃないかなというようなやり方のまま、優勝まであと一歩のところまで持っていけたところに彼の力を感じます。

クラブ全体が「リカルドのサッカーを成功させよう」と団結しました。うまくいった要因の一つは、監督が求めた選手たちをしっかり獲得できたこと。一緒に戦ったことがある選手を獲得するなど戦略的です。例えば、ちょっと疑問に思ったり、不満に思ったことがあれば、リカルド・サッカーを理解している選手が“通訳”となって伝えられる。そのような人選でした。

僕ら11年の優勝時は、レアンドロ・ドミンゲスやジョルジ・ワグネルという飛び抜けた選手がいました。あうんの呼吸ができていたし、レアンドロをフリーにする方法を選手みんなで考え、やっていた感じです。レアンドロが力を発揮してくれ、そこに僕らが乗っかって得点ができた。あとは競争の中からいい選手が出ていくみたいなサイクルが良かった。今のチームには、戦い方に明確なものがある。こういうふうに攻める、こういうふうに守るというのが、すごく見えます。

それはリカルド監督が考える戦術を“うまく着こなした”思います。よろいを着させられて重くなってしまう戦術でなく、選手が自分ごとというかカジュアルに着こなしている。ただ監督の伝え方だけが良くても、選手の受け取り方次第で違うものになる。選手もうまく受け取り、うまく利用し、うまく使っている。双方の両輪が合っていた。

僕はリカルド監督のサッカーを参考にさせてもらっています。同じ監督の立場から柏の試合を自分たちの試合の次くらいによく見て、研究しています。クリアソン新宿にもうまく取り入れたいと日立台にも今年2回ほど行きましたし、練習試合も行いました。そこでリカルド監督にもいろいろと質問をさせてもらいましたが、しっかりと答えてくれる愛情深い人です。

今のサッカーのトレンドは縦に速く・強く、です。もちろん柏もボール取られた瞬間の強度は強く、守備も整備されている。決して攻撃だけではありません。それでもボールを握り主導権を取りながら攻撃するスタイルは、今のJリーグではなかなか見ない。トレンド的にもそうじゃないものをやってるところに、信念や強さを感じます。

惜しくも優勝はなりませんでしたけど、OBとしてとても誇りに思います。見るものを魅了しているサッカーは本当に素晴らしかった。来年はACLがあると思うので、そこでもこのサッカーで旋風を巻き起こしてほしい。

◆北嶋秀朗(きたじま・ひであき)1978年(昭53)5月23日生まれ、千葉県出身。市船橋で3年連続して全国選手権に出場し、1、3年時に優勝。97年に柏入り。03~05年は清水、06~12年途中まで再び柏在籍。J2熊本で1年半過ごし13年に引退。J1通算230試合59得点、J2通算72試合14得点。日本代表3試合1得点。引退後は熊本、新潟、大宮でコーチを歴任。24年から新宿の監督。

◆ポジショナルプレー 相手が嫌がるポジションを取り続け、守備組織をずらしていく戦術。ピッチを縦に5分割し、各レーンに選手が立ち替わり入ること(ローテーション)で相手のマークを混乱させる。グアルディオラ監督(現マンチェスターC)がBミュンヘン時代に提唱した5レーン戦術が基。今季の柏は、3-4-2-1が基本陣形。攻撃時にはボランチが後方に下がり、3バック右の原田や左の三丸や杉岡らが前に出て行く。高い位置に数的優位をつくる中、シャドーの小泉らが相手ライン間でボールを引き出し、切り崩しにかかった。