◇フィギュアスケート グランプリ(GP)ファイナル 最終日(6日、名古屋・IGアリーナ) 男子フリーが行われ、ショートプ…

◇フィギュアスケート グランプリ(GP)ファイナル 最終日(6日、名古屋・IGアリーナ)

 男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)1位の鍵山優真(22)=オリエンタルバイオ・中京大=が193・64点、合計302・41点の今季自己ベストで2位だった。同2位から出た佐藤駿(21)=エームサービス・明大=が194・02点、合計292・08点の3位で、日本勢がダブル表彰台となった。世界王者のイリア・マリニン(21)=米国=が世界で初めて全6種類の4回転を決め、世界歴代最高の238・24点、合計332・29点でSP3位から逆転優勝した。

 小さく首を傾けた鍵山はほほ笑みながら、控えめに両拳を握った。フリーは193・64点、合計302・41点で銀メダル。「率直な感覚としては、すっごい悔しい。悔しさ、喜び、半分半分」。合計は目標の300点を超えたが、フリーは200点を下回り4位。うれしさの中に複雑さもあった。

 2番前にマリニンが歴代最高の演技を披露して迎えた最終滑走。異様な雰囲気の中、冒頭の4回転サルコーは出来栄え点(GOE)3・74点を引き出した。後半のジャンプでわずかにミスが出たが、オペラ「トゥーランドット」のクライマックス、イナバウアーを披露すると満員の会場が揺れた。「自分の呼吸の音を聞いたり、足元の感覚に意識を研ぎ澄ませていた」。8年ぶりとなる国内でのGPファイナル、日本男子のエースとして役割は果たした。

 “金色”のプログラムでミラノ五輪シーズンを舞っている。フリーの「トゥーランドット」は、現地イタリアの名作。代表的なプッチーニ氏作曲のものではなくアレンジ版で、フリープログラム用に英国でロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と現地のオペラ合唱団の生演奏を収録した。「オリンピックにふさわしい曲の一つ」と鍵山。06年トリノ五輪、女子で荒川静香さんが金メダルを獲得した名曲を引っ提げて、ミラノを見据えている。

 今季2人目の合計300点超え。そしてミラノ五輪の代表選考において重要なGPファイナル日本勢最上位も達成した。ただ最大のライバルとなるマリニンは、フリー歴代最高を大きく更新する238・24点。果てしない点差だが、鍵山もまだ4回転フリップの投入など、さらなる点数アップも見込んでいる。「まず、自分の壁がすごく高い。世界一への距離はすごく遠いと感じた。自分を信じていけるかが大事」。本番まで残り2か月、今できることを積み重ねる。(大谷 翔太)