◆明治安田J1リーグ▽第38節 鹿島2―1横浜FM(6日・メルスタ) 元日本代表監督で、鹿島のアドバイザーとして今季13…

◆明治安田J1リーグ▽第38節 鹿島2―1横浜FM(6日・メルスタ)

 元日本代表監督で、鹿島のアドバイザーとして今季13試合を視察したジーコ氏が6日までに取材に応じ、9季ぶりVを成し遂げた今季の鹿島や鬼木達監督について語った。(取材・構成 岡島 智哉)

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 今季の鹿島は、トレーニングで日々切磋琢磨(せっさたくま)できるチームでした。試合に勝つため、タイトルを取るため、トレーニングの中で、日々努力できるチームでした。

 主力3人(師岡柊生、関川郁万、安西幸輝)が長期離脱となり、最後までプレーできなかったことはとても残念なことでした。しかし今季の鹿島は、誰もが戦力になり得る集団でした。

 鬼木監督は、本当に素晴らしい監督です。彼とは一緒にプレーしていた時期(93~94年)もありました。彼は高校を出たばかりでしたし、出場機会は多くなかったですが、一生懸命トレーニングする選手でした。彼にとっては難しい時期だったかもしれませんが、あの時に学んだことを今の若い選手たちに伝えてくれていると思います。

 鬼木監督の一番の強みは、チームの良さを最大限に引き出すことができることでしょう。川崎では川崎の、鹿島では鹿島の、個々の能力を生かした攻撃的なサッカーを作り上げました。

 コーチの柳沢敦、曽ケ端準、強化部の中田浩二など、タイトル争いの厳しさを伝えられる存在がいることも、このチームにとても大きかった。自分の経験からものを言うことで、説得力が全然違いますから。選手の力になったことでしょう。

 彼らは鹿島のユニホームを着る意義を伝える役割も果たしてくれています。私は常々言っています。履歴書に「鹿島アントラーズ」と書くだけではダメなんだ、と。アントラーズに来たからには、絶対にタイトルを取る、成し遂げるという思いでプレーしなければなりません。

 (元監督の)石井正忠、大岩剛も、選手としてここでタイトルを取り、指導者としても取り、ここを離れてからも結果を残していますよね。鹿島でタイトルを取ることの意味を表していると思います。

 今のユースのスタッフには小笠原満男もいるし、その前は柳沢、その前も熊谷浩二でした。鹿島のエンブレムを胸にプレーすることの意味を伝えてくれています。今は年代別代表に多くの鹿島の選手が名を連ねていますが、これも彼らの力が働いているからでしょう。

 (強化部トップの)中田浩二には、監督と密にコミュニケーションをとることの重要性を伝えました。私も過去に浩二と同じような役職の経験がありましたので、その経験値は全て伝えました。監督に言いづらいことでも伝えなきゃいけない立場だと。これからも自分の経験は彼に伝え続けていきます。

 優磨は今季、ポジティブなリーダーになりました。鬼木監督が来たことにより、彼のリーダーとしての役割が整理されたのではないかと思います。2018年にACLを取った時のように、彼自身のサッカーに集中できる状況になった。成長した彼の姿を見ることができることは、とても幸せなことですね。

 鹿島で現役を引退してから、鹿島とのいい関係性はずっと続いています、日本代表監督退任後は、各国で監督業を行っていたので、公に鹿島で働くことはなかったですが、常にアントラーズを気にかけていましたし、クラブともコミュニケーションをとっていました。

 2018年に改めて携わってほしいと招待を受けましたので、そこからまた深い関係が始まっています。鹿島と私のいい関係性は、これからもずっと続いていくことでしょう。

 組織にとってリノベーションや進化はとても大事なことです。ただ、哲学を忘れちゃいけない。このクラブで働く人間は、クラブの歴史、ここまで道筋を知り、哲学を理解した上で、継承し続けていくことが大事だと思っています。