<フィギュアスケート:グランプリ(GP)ファイナル>◇6日◇愛知・IGアリーナ◇女子フリースケーティング(FS)シニア1…

<フィギュアスケート:グランプリ(GP)ファイナル>◇6日◇愛知・IGアリーナ◇女子フリースケーティング(FS)

シニア1季目の17歳中井亜美(17=TOKIOインカラミ)が、初出場で銀メダルを獲得した。大技トリプルアクセル(3回転半)を冒頭に決め、フリー146・98点で合計220・89点。ショートプログラム(SP)3位からの逆転で日本勢最上位に付け、26年2月のミラノ・コルティナ五輪の代表入りへ大きく前進した。

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ニューヒロインが、一気に日本女子の中心に立った。シニアデビューイヤーの中井が、熾烈(しれつ)な3枚の五輪代表切符争いの先頭に躍り出た。夢舞台の足音が、確かに聞こえる。「近づきすぎなくらい近づいてきた。本当にいいのかなって思っちゃうくらい」。17歳が、無邪気な声を弾ませた。

人生で一番緊張したという演技の冒頭。得点源の3回転半を、全選手の中で最高となる出来栄え点1・94点で決めた。3本目の3回転ルッツが崩れ、連続ジャンプにできなかったが「とにかく自分ならできると思い続けた」。疲労も募る後半の3回転フリップに、3回転トーループをつけて意地のリカバリーに成功。純粋な笑顔に併せ持った、強心臓ぶりを発揮。SPから順位を1つ上げ、初出場のGPファイナルで銀メダルをもぎ取った。

五輪代表は最終選考会となる全日本選手権(12月19~21日、東京)の優勝者が即時内定。2人目は全日本の2、3位、GPファイナルの日本勢上位2人、国際スケート連盟公認のシーズン最高得点上位3人から選ばれ、3人目はこれに世界ランキングなどが加わる。今大会で日本最上位の銀を獲得した中井は2~3枠目の選考の1つをクリア。幼少期からの夢へ大前進し「信じられない」と笑った。

夢が始まったのは、生まれ故郷の新潟市。4歳の頃、10年バンクーバー五輪で滑る浅田真央さんの演技に一目ぼれし、翌年に地元新潟市に開業したリンクで競技を始めた。小学校卒業を機に母と地元を飛び出し、千葉・MFアカデミーを拠点に。23年世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得するなど実力をつけた。GPデビュー戦となった10月のフランス大会優勝から、大ブレークした今季。この日の喜びまでこぎ着け、「ジュニアで表彰台を何度も逃した経験があったからこそ」と歩みを振り返った。

この日は、浅田さんが会場で声援を送った。「6分間練習の時に知って、すごくうれしかった」。憧れの存在が力をくれた。「本番」と目標に据えるのは、2週間後の全日本。「すごく緊張すると思うけど、自分らしく頑張りたい」。夢の場所は、すぐそこにある。【勝部晃多】