<明治安田J1:清水1-2岡山>◇6日◇第38節◇IAIスタジアム日本平清水エスパルスMF乾貴士(37)が涙と笑顔で愛す…

<明治安田J1:清水1-2岡山>◇6日◇第38節◇IAIスタジアム日本平

清水エスパルスMF乾貴士(37)が涙と笑顔で愛するクラブに別れを告げた。契約満了に伴い、今季限りで退団する元日本代表のベテランは、岡山との今季最終戦でフル出場。キャプテンマークをつけて最後の勇姿を見せた。試合後のセレモニーでは人目をはばからず号泣。現役続行を宣言し、最後は笑顔でピッチを後にした。なお、試合は1-2で敗れ、14位でシーズンを終えた。

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込み上げてくる思いを抑えきれなかった。乾は試合後のセレモニーでマイクの前に立った。「今季限りで」と、語り出したところで声を詰まらせた。清水サポーターからは「乾コール」が沸き起こる。再びを話し出すと、声を震わせながら、今季限りでの退団を自らの口で報告した。

22年7月に加入。同年6月に規律違反を発端にC大阪を退団して無所属となっていた乾に、清水が救いの手を差し伸べた。「引退も考えていた」中で電撃加入。拾ってくれた恩義はプレーで必ず返す。その思いだけで戦ってきた。

加入1年目はJ2降格を経験した。2年目の23年は10得点10アシストの活躍を見せたが、チームはJ1昇格プレーオフ決勝で引き分け、J1復帰を逃した。このままでは終われない。雪辱を誓った24年は主力としてチームを引っ張り、J2優勝でのJ1昇格に大きく貢献。在籍した3年半でリーグ戦110試合出場19得点。「こんな問題児の僕を使ってくれた清水エスパルスのみなさん、本当にありがとうございました」と感謝の思いを伝えた。

何よりも、温かく迎え入れてくれたサポーターの優しさがうれしかった。乾は「『清水にきてくれてありがとうございます』という言葉がすごくうれしかった。こんな僕を拾ってくれて、応援し続けてくれてありがとうございました」と声を絞り出した。

あいさつでは「こんな形で引退するのは嫌なので、もうちょっと頑張ります」と現役続行を宣言した。乾のプレーで何度もチームは救われた。純粋に楽しむ姿にサポーターも心を奪われた。サッカー少年のような屈託のない笑顔と笑い声で、チームの雰囲気も明るくなった。近年低迷が続いていたクラブの先頭に立って引っ張ってきた功績は計り知れない。「これからもエスパルスを愛していきます」。清水を愛し、愛された功労者は涙を拭い、笑顔でピッチを後にした。【神谷亮磨】