<明治安田J1:鹿島2-1横浜>◇6日◇最終節(第38節)◇メルスタ鹿島アントラーズが9季ぶり9度目のリーグ制覇を成し遂…

<明治安田J1:鹿島2-1横浜>◇6日◇最終節(第38節)◇メルスタ

鹿島アントラーズが9季ぶり9度目のリーグ制覇を成し遂げた。ホームで横浜F・マリノスに2-1で勝利。23勝7分け8敗で勝ち点を76に伸ばし、前回2016年以来のシャーレ(優勝皿)を獲得した。当時は2ステージ制で年間3位からの大逆転V。1シーズン制では、史上初の3連覇を遂げた09年以来16年ぶりの王座で、通算は歴代最多を更新する21冠となった。

川崎フロンターレ時代、主要タイトルを7つ獲得するなど黄金期を築いた鬼木達監督(51)が、今季から古巣を指揮して1年目で成就。歴代1位を独走するJ1優勝監督5度、異なるクラブでは史上初となる偉業を達成し、奪還に導いた。

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聞き慣れていたはずの凱歌が、実に9年ぶりに響き渡った。2016年12月3日の前回Vから3290日-。かつての常勝軍団が、国内タイトル無冠7年の過渡期を経て“定位置”に返り咲いた。1点リードの後半追加タイム5分すぎ、祝福の笛が鳴ると、鬼木監督や日本代表GK早川友基(26)のもとへ仲間が駆け寄り、歓喜の山ができた。

前半21分にエースFWレオセアラ(30)の今季20点目で先制。右からのオーバーヘッドの折り返しを、右足ボレーで沈めた。1-0で迎えた後半12分にも追加点。MF松村優太(24)の柔らかい右クロスに、レオセアラがダイビングヘッドで合わせた。守っては、日本代表GK早川友基(26)やゲーム主将の元日本代表DF植田直通(31)が後半追加タイム2分の1失点だけにとどめて逃げ切った。どのような展開でも勝つ、往年の試合運びだった。今季フル出場の植田は「これまで長い時間、待たせてしまったこと申し訳ないと思っていましたし…」と声を震わせ「この景色は忘れられないですし、もう1度、来年も再来年も。鹿島が1番だ!!!」と黄金時代の再来を約束した。

優勝請負人で復権した。クラブOBで、神様ジーコの薫陶を受けた選手時代以来26年ぶりに鬼木監督が帰還。川崎F時代に鹿島を無冠へ追いやっていた男が、今回も自ら、古巣の不遇史に終止符を打つ救世主となった。

ウォーターシャワーで祝福された鬼木監督は「最高です! 僕は楽しめなかったですけどね(笑い)。最高です。もう言うことないです。(9季ぶり優勝に)9年間の悔しさで1つになれた。このスタジアム、すごいなって思います。最強でしたね。この1年間、たくましく成長してくれた。シーズン前に独走しよう、と言ってギリギリでした(笑い)。でもメンタルのところ、こんなに成長するんだなと。頼もしかったです。鹿島最高!」と喜び、完売の3万7079人から鬼木コールを浴びた。

2017年12月2日。鹿島は「川崎Fの鬼木監督」に、J1最終節で優勝をさらわれた。首位で迎え、川崎Fに勝ち点2差をつけていたが、ジュビロ磐田と0-0で引き分けた。一方の川崎Fは大宮アルディージャに5-0。勝ち点72で並ばれ、得失点差で上回られて、川崎Fにクラブ初タイトルを許した。

それから8年で、鬼木フロンターレは4度のリーグ優勝を含む7冠。反対に鹿島は、念願のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を18年に制したものの、国内タイトルからは8年間も見放される過渡期に陥った。

以降の8年間で、暫定も含めて監督8人が交代したほど迷走。そこに、常勝再建の旗頭として鬼木監督が帰還した。昨季限りで川崎Fを退団し、鹿島へ戻り、就任1年目で9年ぶりの頂点に導いた。

その今季は開幕の湘南ベルマーレ戦こそ敗れたが、第5節で首位浮上。その後は陥落がありながらも、終盤に無双し「15戦無敗」で頂を奪い返した。MF小笠原満男(現ユース指導者)DF中田浩二(強化責任者)GK曽ケ端準(現GKコーチ)らレジェンドはもちろん引退したが、前回9年前の優勝を知るMF柴崎岳主将、FW鈴木優磨、DF植田らがそれぞれ欧州から復帰。今季獲得した得点ランキング1位の、クラブ伝統のブラジル人FWレオセアラを軸に「強い鹿島」を取り戻した。

前節の東京ヴェルディ戦で王手をかけた後、鬼木監督は「最後は気持ち。己、自分自身にどれだけ勝てるか。最後は相手ではない。チャレンジしないと道は開けない」と燃えていた。選手に響く熱い言葉の通り、最終節の重圧下で自身に打ち勝って、Jリーグ史上初となる2クラブ目の優勝監督にも上り詰めた。

9年前の優勝は当時2ステージ制で、第1ステージを制してチャンピオンシップへ。年間は3位(1位の浦和レッズと勝ち点15差)だったが、敵地埼玉で下克上を果たしたものだった。1シーズン制では09年の今日と同じ12月6日以来、実に16年…5844日ぶりの戴冠となった。【木下淳】