<明治安田J1:鹿島2-1横浜>◇第38節◇6日◇メルスタまさに温故知新。「サッカーの神様」が約30年前に植え付けたアイ…
<明治安田J1:鹿島2-1横浜>◇第38節◇6日◇メルスタ
まさに温故知新。「サッカーの神様」が約30年前に植え付けたアイデンティティーが鹿島復活のカギとなった。ブラジル代表のスター選手だったジーコ氏(72)は、当時日本サッカーリーグ2部の住友金属に加入して「献身、誠実、尊重」など今もクラブに根付く哲学を注入した。勝負にこだわる姿勢を誰よりもピッチ上で体現し、J最多の20冠獲得の礎を作った男は、22年からクラブアドバイザーに就任。教え子の中田浩二フットボールダイレクター(FD)、後輩の鬼木達監督らをサポートし、9季ぶりリーグ制覇を支えた。
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クラブハウスに足を踏み入れるとその存在の大きさをすぐに知ることとなる。至るところに写真が貼られ、敬われているジーコ氏。そんなレジェンドは、グッと力を込めて言った。
「履歴書に『鹿島アントラーズ』と入れるだけでなく、鹿島に来たからにはタイトルを取る、ここで何かを成し遂げるという心持ちでクラブに来なければいけない」
Jリーグが始まって33年。鹿島というクラブは、どこよりも多くタイトルを獲得してきた。その根底にあるのが、ジーコスピリット。勝負にこだわり、国内外で圧倒的な存在感を放ってきた。直近8年はリーグタイトルから遠ざかったが、中田FD-鬼木監督体制1年目の今季は柳沢敦、中後雅喜、曽ケ端準ら黄金期を知るOBたちが脇を固め、栄冠をつかみとった。ジーコ氏は「彼らはこのような状況でタイトル争いの難しさ、厳しさを後輩たちに伝えられる存在。鹿島に来る意義を植え付ける意味でも大事な役割をやってくれる」と誇った。
鹿島の根底に流れる勝ちへの強い執念は、ジーコ氏が母国ブラジルの名門フラメンゴの下部組織時代に培った。「フラメンゴでプレーするとはどういう意味があるのかをしっかり植え付けられた。勝ちにこだわる姿勢は自分が育てられた過程で培ったもの。それを後輩に受け継いでいる。どこにいってもそれをやって、うまくいっていることの方が多い」とうなずく。
時は流れ、サッカーも変化する。それでも見失ってはいけない本質がある。「チームにとって新しく進化するのはものすごく大事な要素。ただその中で哲学は忘れてはいけない。スタッフ、監督が変わっていく中でも一本忘れてはいけないものは継承していくのがチームにとってものすごく大事」。「神様」の教えを体現し、新たな常勝軍団への扉を開いた。【佐藤成】