<フィギュアスケート:グランプリ(GP)ファイナル>◇5日◇第2日◇名古屋市・IGアリーナ◇ペア・フリー愛称「りくりゅう…

<フィギュアスケート:グランプリ(GP)ファイナル>◇5日◇第2日◇名古屋市・IGアリーナ◇ペア・フリー

愛称「りくりゅう」こと三浦璃来(りく、23)木原龍一(33)組(木下グループ)が、3年ぶり2度目の優勝を飾った。フリーで自己ベストの147・89点、合計で今季世界最高の225・21点。トップから3位までが3・96点差でひしめく激戦の中、2年ぶりに制した3月の世界選手権に続いて主要国際大会で頂点に立った。開催地の名古屋は、19年に2人がトライアウトをした場所。始まりの地で成長を示し、来年2月のミラノ・コルティナ五輪での日本勢初の金メダルへ弾みをつけた。

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木原は心の中で唱えていた。「最後まで諦めたらいけない」。横並びで跳ぶ3連続ジャンプの3本目で手をつくミスをしたが「気持ちを切り替えよう」と集中。減点を最小限にとどめながら技を重ねた。フィニッシュすると、三浦は笑顔でガッツポーズした。「最後までやりきれた」。大きなミスなく演技を通し、今季世界最高得点で3年ぶりに優勝。木原は「結成した地が名古屋。優勝できて素晴らしいものになった」とかみしめた。

2人が出会ったのは19年7月。14年ソチ、18年平昌で五輪に2大会連続出場した木原は、新たな相棒を探していた。それまで国際大会で上位に進めず「常に辞めたほうがいいと思っていた」と葛藤する中、9学年下の三浦から相性を確かめるトライアウトに誘われた。故郷の愛知県東海市からほど近くにある、名古屋市・邦和みなとスポーツ&カルチャーのリンク。木原が貸靴コーナーでアルバイトをしていた場所に集まり「最後のチャンス」と初めて一緒に滑った。

ペアは2人横並びで跳ぶサイドバイサイドジャンプや、男子が女子を持ち上げながら滑るリフトなどがあり、両者が足並みをそろえることが重要。長く続かないペアも多いが、三浦との初滑りで「雷が落ちた。今までと違う」。全ての感覚が合い、そのまま正式に結成した。すぐにカナダに拠点を移して研さんを積み、22年北京五輪で日本勢最高の7位。22-23年は主要国際大会のGPファイナル、4大陸選手権、世界選手権を全て制した。今年3月の世界選手権でも2度目の頂点に立った。

世界トップの常連となった中、GPシリーズ上位6組による今大会では、始まりの地の名古屋に舞い戻った。優勝にはフリー自己ベストが求められる状況で迎えた本番。三浦は「ナーバスになることなく、いい波に乗れると思った」と前向きに捉え、武器の疾走感のある演技で4階席まで埋まった観衆を沸かせた。「私たちらしい滑りができてうれしく思う。スケーターとして、すごく強くなれた」。始まりの地で示した成長。悲願の五輪金メダルが見えてきた。【藤塚大輔】