相手指揮官も舌を巻く勝負どころのパフォーマンス栃木ブレックスは昨日、川崎ブレイブサンダースと対戦し、残り1秒に放ったライアン・ロシターの3ポイントシュートによって逆転勝利を収めた。このドラマティックな勝利は栃木らしさの象徴である『全員バスケ…

相手指揮官も舌を巻く勝負どころのパフォーマンス

栃木ブレックスは昨日、川崎ブレイブサンダースと対戦し、残り1秒に放ったライアン・ロシターの3ポイントシュートによって逆転勝利を収めた。

このドラマティックな勝利は栃木らしさの象徴である『全員バスケ』が機能した結果だ。5人が2桁得点を挙げたバランスの良さが数字にも表れている。中でもチームハイの15得点を挙げた田臥勇太の存在は際立っていた。それでも田臥は『個人ではなくチーム』を強調する。

「自分で崩してシュートを打ったわけでもないですし、CB(セドリック・ボーズマン)だったり周りが崩してくれてスペースを取って打ったシュートもありますから。最後のレイアップもディフェンスを頑張ってくれて自分がレイアップにもっていけているので、いかにみんなでディフェンスを頑張ってみんなで攻めてるかということだと思います」

第2クォーターに17点差をつけられるも、6連続得点でゲームを立て直し、最終クォーターには勝負どころの3ポイントシュートや同点に追いつく速攻のレイアップを決めた。この大事な場面での田臥の『嗅覚』には川崎の指揮官である北卓也も脱帽といった様子で、「僕が言うのもおこがましいですけど、元NBAプレーヤーなので僕なんかよりも勝負どころが分かっている」と語る。「勝負どころでそこまでアウトサイドシュートの高いプレーヤーではないですが、ゾーンにした時に3ポイントシュートを決めたり、さすがだなと思いました。調子が良かったですからそこをアジャストして田臥選手のところを守らなきゃいけなかった」

「同じ過ちを犯さないように必死になってやっている」

15得点は田臥にとってシーズンハイの数字だが、そのことを問われても表情は変わらない。「自分のシュートがどうこうよりも、チームとしてどれだけ守ってオフェンスにつなげるかに重きを置いてますので。空いたら打ちますし空いてなきゃ展開してっていう、いかにシンプルにできるかっていうのを意識しました」

ここまで勝ち星が伸び悩んでいた栃木は点差が離れた時に踏ん張り切れなかったり、終盤にリードを吐き出してしまうなど『我慢のチーム』らしからぬ試合展開での負けが続いていた。だが昨日の試合では最大17点差をつけられても踏ん張り、ラスト4秒で勝ち越しを許しても試合を捨てなかった。

「残り5分まで勝っていてひっくり返されたりだとか、勝ちきれない試合を他のチームよりもたくさんしてきてると思いますから」と田臥は苦笑いを浮かべたが「そういう試合をシーズン最初に経験しているからこそ、同じ過ちを犯さないようにみんな必死になってやっている」と語る。

またヘッドコーチの交代劇も一つの起爆剤として前向きにとらえている。「正直コーチも変わって状況が変わっていく中でさらに一つにまとまっていかなきゃいけないですし、それが良いきっかけになるとも思っていますので。今までの悪い部分をしっかりどれだけ克服していけるかです」

「調子が良い時も悪い時もチームです」

「すぐにできたらそんな楽なことないですけど、自分たちはやれる、やらなきゃいけないと信じてまとまっています」とチームの持つポテンシャルを信じ、プロとして責務をまっとうするという気概を見せた。

出だしが悪かったとはいえ、栃木の強みである『我慢強さ』を取り戻しての逆転勝利は、ある意味では理想的な試合内容であったと言える。「最後まで戦い続けて粘ってあきらめないという部分は、これからのこのチームのプラスになる部分ではあったと思います」と田臥も手応えを得ていた。

「調子が良い時も悪い時もチームですし、それをどうカバーしてみんなで助け合って勝利につなげられるかっていうのは、とことんこだわっていきたいと思います」

スタートダッシュの失敗からヘッドコーチの交代劇を経て、新たな一歩目を歩みだした栃木。田臥の言うとおり「簡単ではない」が、強豪の川崎に競り勝った昨日のようなパフォーマンスを継続できれば完全復活もそう遠くはないはずだ。田臥がこだわる『フォア・ザ・チーム』の精神がチームに浸透すれば、昨シーズンの栄光を再び手に入れることができるかもしれない。