男子テニスの世界最高峰の舞台に、ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルが帰還した――。 ワールドテニス男子ツアーの最終戦であるATPファイナルズ(11月12日~19日、ロンドン・O2アリーナ、昨年までのワールドツアーファイナルズが今…

 男子テニスの世界最高峰の舞台に、ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルが帰還した――。

 ワールドテニス男子ツアーの最終戦であるATPファイナルズ(11月12日~19日、ロンドン・O2アリーナ、昨年までのワールドツアーファイナルズが今年から大会呼称変更)は、シーズンの成績上位8選手だけが出場を許されるエリート大会で、36歳のフェデラー(2位、スイス、11月6日付け、以下同)と31歳のナダル(1位、スペイン)は、ともに2年ぶりの出場を果たした。



フェデラーやナダルらがお揃いのスーツを着て、ロンドン塔の前でフォトセッションが行なわれた

 昨年は左ひざのリハビリのため最終戦に出場できず、連続出場記録が14回で途絶えたフェデラーだったが、今年は15回目の出場を決めて、華麗なるカムバックを果たした。

「昨年はここ(ロンドン)に来ることができなかったんだから、素晴らしい成果だと思うよ。

 今季は(17位からで最終戦へは)かなり遠いポジションからスタートしなければならなかった。僕の最初のゴールは、ウインブルドンの前後ぐらい(6月頃)までに、8位あたりが現実的になれば、というものだった。(1月の)オーストラリアン(全豪)オープンで優勝できて、かなりいいポジションになったね(ウインブルドンも優勝したので最終戦の出場権をいち早く確定)。シーズンを通して、自分のプレーが本当によかった」

 こう語ったフェデラーは、10月に地元のATPバーゼル大会で8回目の優勝をして、今季7勝目を挙げた。同時にツアー通算タイトルが95回となり、イワン・レンドルを抜いて、ツアー史上2位の記録をつくっている(1位は、ジミー・コナーズの109回)。その直後、腰の故障のためにマスターズ1000・パリ大会をスキップしてファイナルズに備えた。現在、最終戦史上最多となる6回、このタイトルを獲得しているフェデラーはロンドン入りしてからもいい練習をこなしており、6年ぶりに自身の記録を塗り替えて7回目の優勝も十分に考えられる。

 ナダルはレギュラーシーズン最後の大会であるマスターズ1000・パリ大会の2回戦に勝利した時点で、2017年シーズンの年間ナンバーワンを決めた。31歳での年間ナンバーワン獲得は、史上最年長記録となった。今季はローランギャロス(全仏)とUS(全米)オープンを含めた6回の優勝を成し遂げた。1年前には左手首の痛みのため戦列を離れていたナダルも見事なカムバックを果たした。

「31歳で年間ナンバーワンになれたことは、素晴らしい結果だし、自分にとってとても重要なことだ」

 ただ、右ひざのケガのためパリ大会準々決勝を棄権したため、8回目のファイナルズに間に合うかどうか不安視されていたが、「月曜日の初戦に間に合うと思うから、ここへ来た。いい練習はできているよ」と前向きな姿勢を見せている。

 実は、ナダルは最終戦で2010年と2013年に準優勝があるものの、まだ優勝したことがない。グランドスラム4大会すべてに優勝し、オリンピック金メダルも獲得。男子国別対抗戦デビスカップでも優勝経験がある彼にとって、ファイナルズは残された最後のビッグタイトルと言われている。

 フェデラーとナダルによるベテラン復活の一方で、今回のファイナルズでは、アレクサンドラ・ズベレフ(3位、ドイツ)をはじめ、グレゴル・ディミトロフ(6位、ブルガリア)、ダビド・ゴフィン(8位、ベルギー)、ジャック・ソック(9位、アメリカ)の4人が最終戦初出場となり、フレッシュな顔ぶれがそろった。

 特に、弱冠20歳でファイナルズデビューを飾るズベレフは、今年ローマとモントリオールのマスターズ1000大会で優勝し、ATPツアーに新風を巻き起こした。しかも、ローマの決勝では、ノバク・ジョコビッチ(12位、セルビア)を、モントリオールの決勝ではフェデラーを破っており、実力は折り紙付きで次代のチャンピオン候補筆頭だ。

 ファイナルズでは出場選手8人を4人ずつ2グループに分け、ラウンドロビン(総当たり戦)を行ない、各選手は1日おきに3試合を戦って、各グループの成績上位2名が、準決勝へ進出することになる。

 グループ分けの結果、ナダルは、ドミニク・ティーム(4位、オーストリア)、ディミトロフ、ゴフィン。フェデラーは、ズベレフ、マリン・チリッチ(5位、クロアチア)、ソックと同じグループに入った。

 もちろんトップ8の選手同士のマッチアップになるので、誰と対戦しても簡単な試合にはならない。

 フェデラーとナダルの年齢を踏まえれば、今後ファイナルズでそろって出場することはそう何回も実現することはないだろう。だからこそ、今一度フェデラー対ナダルの黄金対決を見たいと願う人も多いのではないだろうか。

「ここ(ロンドン)に戻れて、ベストな環境でベストの選手と競い合えることがとても嬉しい。ここでのプレーは、いつも1年の大きなハイライトのひとつになるからね」と意気込むフェデラーが、また新たな伝説をファイナルズでつくるのか。それともナダルが年間王者の意地を見せるのか。あるいは初出場組が下剋上を果たすのか。

 2017年のベスト・オブ・ベストを決める戦いが始まる。