SNSが世の中のいろいろなカタチを変えてしまってからどれくらいの時間が経っただろうか。この新しいサービスがなければ決し…

SNSが世の中のいろいろなカタチを変えてしまってからどれくらいの時間が経っただろうか。この新しいサービスがなければ決して出会わなかった人たちが、つながり交流し理解し合う。とても便利なツールだが時には人を傷つけ、またある時には数えきれないほどの笑顔を作り出す世界線。もはやSNSが無い地球は想像できないくらい、人類の懐に入ってしまっている。

僕がゴルフというスポーツをブラウン管を通して見始めた頃、SNSはもちろんのこと、インターネットすらまだ存在していなかった。やがてプロゴルファーが自らメディアを持ち、毎日のように情報を発信し、そしてその情報をきっかけにファンがプロゴルフトーナメントに足を運ぶ時代が来るなど誰が想像できただろうか。

今年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」は過去最高の入場者数を達成した。これは今年の男女両ツアーの最高入場者数でもある。大型新人のプロデビュー戦や連日の好天と他の要因もたくさんあるが、SNSで自らをプロデュースし発信し続けるプロゴルファー、いやエンターテイナーと書いた方がマッチしているかもしれない。堀川未来夢が上位で戦っていたのもその要因の一つであることは間違いない。

YouTubeのチャンネル登録者数40万人を超える彼の組は同伴競技者も含めて皆笑顔が絶えない。集まったファンもいつも眺めている自身の端末ではなく、身近に感じられる「推し」のプレーを心ゆくまで楽しんでいる。さしずめティイングエリアは「ステージ」、ティショットはまさに「ショータイム」といったところだろうか。多くのギャラリーを引き連れた彼の組がホールアウトし、引き上げていくとクラブハウス前は今日一番の盛り上がりを見せた。

人を惹きつける方法は一つではない。プロゴルファーとしてゴルフのスコアはもちろんだが、それ以外の手段でファンを喜ばせることはいくらでもできる。見にきてくれたファンに一言感謝を告げればみんなハッピーな気持ちで家路につけるし、また応援したい気持ちになる。諸刃の剣でもあるSNSとうまく付き合いながらたくさんのギャラリーを幸せにしている彼は、これからの新しいプロゴルファーのカタチを示してくれている。(フォトグラファー・今井暖)