阪神の坂本誠志郎捕手(32)はトップチームで自身初の代表入りを果たし、侍ジャパンの一員として11日間の濃密な日々を過ご…
阪神の坂本誠志郎捕手(32)はトップチームで自身初の代表入りを果たし、侍ジャパンの一員として11日間の濃密な日々を過ごした。今回、最大のテーマとなったのはピッチクロックやピッチコムといった新ルールへの対応。ピッチコムは「慣れが必要」という意見が出る中、坂本発案の“パワプロ仕様”が導入されていた。侍に残したものや学んだことを、期間中の言葉で振り返る。
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合宿初日、ブルペンで初めてピッチコムを使った後だった。坂本は囲み取材の輪がとけた後、ボソッと言った。「パワプロみたいにしてくれたらいいのに」。九つのボタンに球種を設定し、覚えなくてはいけない。カンペのようなものは持てても、ピッチクロックへの対応を考えれば、すぐにサインを出せるのが理想だ。
当初は起点となるボタンを決め、そこからストレート、スライダー、カーブ…のように設定していたという。すぐに暗記とはいかない。そこで坂本はバッテリー陣に“パワプロ風”のボタン設定を提案した。4人の捕手と投手陣も前向きな意見が多く、“パワプロ仕様”が採用された。
ゲームを実際にプレーしたことがある人ならわかると思う。上方向がストレート、右がスライダー、左がシュート、下がフォークといった形。これなら簡単に覚えることができ、暗記をするという手間を省けた。
15、16日の韓国戦。日本バッテリーがピッチコムやピッチクロックに苦戦する場面は少ないように感じた。「最初の頃は焦りもあったけど慣れてきた。時計を見ながらやることもできました」。投手へのジェスチャーや守備位置の指示など、いつも通りの女房役の仕事ができていた。これは坂本が侍ジャパンに残したものだった。
もちろん、日の丸を背負って刺激を受けたことも多い。11日間、何度も「楽しい」という言葉を聞いた。合宿前から「あのスライダーはすごい」と絶賛していたオリックスの曽谷とは15日にバッテリーを組んで、3回パーフェクト。ソフトバンクの松本裕はブルペンの立ち投げを受けただけで「センスがすごい」と修正力に驚いていた。
来年3月のWBCは井端監督が捕手3人制を明言している。ヤクルトの中村悠、オリックスの若月、巨人の岸田らとの争いになる。それぞれの良さがあり、最終選考で指揮官が誰を選択するか。今合宿から強化試合まで、全員が十分にアピールしていた。
「またもう一つ成長できるような舞台になると思う。やっぱりチャレンジしたい。でもまだまだ足りない。もっとレベルアップして3月を迎えられるように、そういう時間を今後作っていかないといけない」
坂本は侍ジャパンに財産を残した分、今後の野球人生への財産を得ることもできた。WBCで“パワプロ仕様”のピッチコムを操り、世界の猛者たちと戦う。個人的にはそんな姿が見たいし、見られると思っている。(デイリースポーツ・今西 大翔)