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 U18日清食品トップリーグ2025男子の最終日、東山高校対帝京長岡高校の一戦でレフェリーを担当したのが日本体育大学荏原高校3年の岩永颯だ。男子高校生が同大会でレフェリーを担当するのは岩永で3人目。横浜ビー・コルセアーズU18に所属し、選手として活動しながら審判資格も取得している高校生であり、“選手と審判の両立”という特徴を持つ高校生レフェリーだ。

 東京都男子高体連に所属する岩永は、小学3年生からバスケットボールを始めた。横浜市の十日市場ミニバスで競技をスタートし、中学校も同じく十日市場中学校でプレー。高校は日本体育大学荏原高校に進学したが、選手としては横浜ビー・コルセアーズU18で活動しており、中学3年時に部活動を終えたのちにクラブユースへ参加した。

 審判を意識したきっかけは小学5年生の練習試合にあったという。「対戦相手の選手が、試合に出ていないときは審判をしていて。それを見て、カッコいいなと感じました。翌年、コーチでもある父から『全員一度は審判をやってみよう』と言われて笛を吹いたのが最初です」と振り返る。正式に資格取得へ向かったのは中学2年生のころ。休校が続いたコロナ禍の時期に、母親から「何か資格を取ってみたら」と勧められたことが後押しになり、Eラーニングで審判員の資格を得た。

 現在はB級の資格を持ち、これまでBリーグのU16チャレンジカップやU15チャンピオンシップでも笛を吹く機会があった。「いろいろな経験をさせてもらっています」と語り、高校生の関東大会予選でもレフェリーを務めるなど、若くして多様なカテゴリーの試合を担当している。

 今回の試合は、バスケの聖地とも言われる国立代々木競技場第二体育館で行われた。「こんなにお客さんが入った会場で、プロレフェリーの漆間(大吾)さんと一緒に吹くことは初めてで、楽しみながら貴重な経験ができればと思って臨みました。たくさんフォローもしていただきましたし、無事に試合を終えられてよかったです」と語り、緊張よりも充実感の大きい経験になったと話す。

「ルールを理解している分、プレーでは何がダメで何がいいかを最低限わかっているので、うまく活かしたいと意識しています」と話すように、審判としての視点がプレーへ影響する面もある。選手としての感覚を持ちながらレフェリングに取り組む二刀流の姿勢は、本人にとっても強みになっている。

 この試合のクルーチーフを務めたのは、JBA公認プロレフェリーの漆間大吾氏。漆間氏は「びっくりするくらい落ち着いていたので、高校生らしさを良い意味で感じませんでした」と第一印象を語る。「場数を踏んでいるのがよく分かりました。代々木第二のような歴史のある会場に慣れていることもあり、上がることなく冷静に取り組んでいました」と続け、岩永の冷静な姿勢と対応力を評価した。

 また、選手と審判の二面性についても肯定的な見解を示す。「早い時期に審判を経験するメリットは、積める試合数が多いこと。場数は審判にとって大事ですし、東京や横浜のように大会数が多い地域にいることもアドバンテージになります」と語る。さらに、「彼の場合は冷静さが魅力。(前日女子の試合を担当した)三海(世奈)さんとはまた違ったタイプの優れた若手がいると感じました」と述べ、男子・女子それぞれの高校生レフェリーに異なる個性があることにも触れた。

 将来について岩永は「大学では選手として本気で取り組みたいです。プロ選手も目指しています。選手には終わりがあるので、引退後もバスケットに関わるために審判も続けています。将来的には漆間さんのようなプロレフェリーになれたらと思っています」と語る。大学は日本体育大学へ進学予定であり、審判資格については「審判の資格をステップアップしていきたいです」と話し、選手としての挑戦と並行して段階的に取り組んで行く予定だ。

文=入江美紀雄

【動画】東山対帝京長岡の試合を担当した岩永颯