FA権を行使せず残留を決めた阪神近本光司外野手(31)が一夜明けた12日、改めて使命を胸に刻んだ。社会人野球日本選手権決…

FA権を行使せず残留を決めた阪神近本光司外野手(31)が一夜明けた12日、改めて使命を胸に刻んだ。社会人野球日本選手権決勝のヤマハ-日本生命(京セラドーム大阪)で始球式を務めた。大阪ガス時代の2年間、地域や子どもと関わる大事さや、負けられない重圧と責任感を体感。地域の少年少女を喜ばせる原点を思い返した。この日は外野手部門で5年連続5度目のゴールデングラブ賞も受賞。ダブルで来季へ決意を新たにする1日となった。

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懐かしい空気が流れる社会人野球日本選手権決勝の晴れ舞台。まばゆいマウンドに立った近本に、アマ野球ファンから声が飛んだ。「残留、ありがとう~!」。前夜11日に阪神残留を発表したばかりの時の人。先頭打者として始球式の打者役を務めることが多かったがリードオフマンが、きれいなフォームの左腕から力強い球を投げると、また大きな拍手が沸いた。

「いい景色でした。社会人ならではの雰囲気で、決勝なので、なんとか邪魔をしないようにと思いました。(感謝の声は)聞こえました」と照れ笑いした。

大阪ガスでの2年間はかけがえのない時間だった。入社2年目の都市対抗で優勝し、橋戸賞(MVP)受賞。ドラフト1位評価に至ったが、原点は1年目にあった。都市対抗の予選で敗退した苦い記憶が、最も強く残っているという。

「地域をあげて、野球で盛り上げることを一番教えてもらった。(予選は)こういう歓声や応援はないのに重圧がすごい。これからの人生で、どう野球と関わっていこうかと考えるきっかけにもなった。そういう経験をしたから、地域の子どもたちに貢献できるようにと思っています」

前日の残留会見でも「新しいことに挑戦」とした上で「楽しくやっているところをファンの方に見せたい」と強調。今後、野球をやる上でのモチベーションについても繰り返し触れていたが、社会人時代の体験も大きく影響している。そして改めて原点を思い返したこの日、来季以降も背負う使命も肌身で確認した。

日本シリーズ終了翌日からの“FA狂騒曲”は「疲れたっす…」と心身にこたえたようす。大きな決断を終えて、ようやく来季への準備が本格化する。体作りと、技術的にも新しい挑戦をしていく可能性がある。

「体はすごく大事なので、より意識を高めて。いろいろなことに挑戦しながらです。失敗も多いと思うけど、まあ進化しても、後退しても何でもいいので、楽しければいいかな、と」

新しい1歩の誓いを立てた。【柏原誠】