今季、国内フリーエージェント(FA)権を取得した阪神近本光司外野手(31)が、権利行使せずにチーム残留を決めた。申請期限…

今季、国内フリーエージェント(FA)権を取得した阪神近本光司外野手(31)が、権利行使せずにチーム残留を決めた。申請期限最終日の11日、球団との10時間に及ぶ超ロング交渉で結論を伝えた。地元兵庫・淡路島出身でドラフト1位入団。強い虎のシンボルは、球団初のセ・リーグ連覇、そして黄金時代の中心として来年からも甲子園で暴れ続ける。契約は球団史上最大規模の5年総額25億円となった。(金額は推定)

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午後8時を過ぎた甲子園。近本はようやく朝から詰めかけた報道陣の前に立った。10時間に及ぶ超ロング交渉になったが、表情に疲れは見えなかった。重い決断だった。すべての選択肢を捨てずに日々を過ごし残留を決めたのも、権利行使もしないと決めたのも申請最終日のこの日だった。

「いろんな選択肢がある中で、僕はやっぱりタイガースの、特に甲子園のあの歓声の中でやる。それに代わるものはない思っています。それと他球団の評価を天びんにかけることもしなかったです」と、はっきりした口調で語った。

球団と話し合ったのは去就や契約内容のことだけではない。詳細は伏されたが球団のビジョン、プレー環境、待遇などあらゆる部分に話が及んだ可能性がある。

「今は阪神と話すことしかできない。しっかり話し合って、球団の話と僕の思いと、これからどういうモチベーションでやっていくかというところです」。近本のプロ野球はただのビジネスではない。小さな体にムチ打ち、日々を野球にささげる覚悟が必要。そしてアスリートとしての楽しみを見いだせなければユニホームを着ている意味も薄れる。残りの野球人生で、一番大事なものは何かと、自問自答する日々だった。

契約は5年総額25億円に及ぶ球団史上最大規模になった。昨オフ結んだ大山の5年総額17億円プラス出来高払いを超え、過去最大とされる14年オフの鳥谷敬の5年20億円も上回る。

「小さい時からタイガースを見てきて、ドラフト1位で選んでいただいて、すごい縁がある球団。本当にこのチームで頑張ってきてよかったし、またファンの人、球団、チームメートと喜びを分かち合いたい。今までよりも楽しく野球ができたらいいなと思える球団です。僕は僕らしくやりたいですね」

来年の開幕は3月27日、東京ドームでの巨人戦。初回、1番打者で背番号5が左打席に立つ。近本の一振りから、リーグ連覇の道は始まる。【柏原誠】

▼近本の5年契約は4人目の球団最長年数。過去には01年オフに日本ハムからFAで獲得した片岡篤史が5年12億円、14年オフにFA宣言残留した鳥谷敬が5年20億円、24年オフにFA宣言残留した大山悠輔が5年17億円の契約を結んでいる。なお阪神は、00年オフにFA宣言した新庄剛志にも5年12億円の大型契約を提示したが、阪神とは契約せずメッツに移籍した。

◆近本光司(ちかもと・こうじ)1994年(平6)11月9日生まれ、兵庫・淡路市出身。社-関学大-大阪ガスを経て18年ドラフト1位で阪神入団。1年目にセ・リーグ新人最多記録の159安打。盗塁王6度、最多安打1度、ベストナイン4度、ゴールデングラブ賞4度。23年のオリックスとの日本シリーズではMVPを獲得。171センチ、70キロ。左投げ左打ち。

(金額は推定)