今季、国内フリーエージェント(FA)権を取得した阪神近本光司外野手(31)が権利を行使せずチームに残留することが決まった…

今季、国内フリーエージェント(FA)権を取得した阪神近本光司外野手(31)が権利を行使せずチームに残留することが決まった。申請期限の11日、球団に結論を伝えた。兵庫の淡路島出身で18年ドラフト1位で地元球団入り。走攻守に魅了する1番打者として、阪神のみならず球界の顔となった。契約は球団史上最大規模になることが確実。リーグ連覇を目指す黄金メンバーの「柱」が来年からも力強く虎の中心に座る。

   ◇   ◇   ◇

日はとっくに暮れていた。超ロングランの交渉を終えた近本が、ようやく報道陣の前に立った。自ら口にした結論はFA権を行使せずに残留。重い判断だった。もちろん去就のことだけでない。契約内容や、チームに関することなども話し合ったもようだ。

期限ぎりぎりの発表となった。近本はすべての可能性を排除せず、熟慮する姿勢を強調してきた。日本シリーズ終了後には「まだちゃんと考えていないし、考える時間もなかった。残りの野球人生、しっかり自分で主体的に決めていきたい」と語っていた。

ファンにも、球団にとっても待ちに待った朗報だ。まさに唯一無二の存在。1年目の盗塁王にはじまり、今季まで7年連続でタイトルを獲得。入団7年目までの通算1093安打は史上2位だ。名球会入り条件の2000安打まで猛スピードで突き進んでいる。走攻守で魅了する1番打者として、2度のリーグ優勝に導いた。トレーニングや体のメンテナンス意識の高さはチーム随一。成績だけでは示せない影響力がある。

球団幹部は、昨オフにFA残留した大山を引き合いに「近本にも誠意を示したい」と話している。大山の契約は5年総額17億円プラス出来高払いだった。阪神で過去最大とされるのは鳥谷敬の5年20億円。近本は今期年俸がすでにチームトップの3億7000万円。契約年数などは不明だが、総額20~25億円に出来高払いという、鳥谷超えの規模になる可能性がある。

昨オフ、大型契約を提示された近本は1年契約を選択した。7年目もフルに稼働し、優勝に大きく貢献。8月に国内FAの取得要件を満たし、オフの去就が注目されていた。

来年の開幕は3月27日、東京ドーム。いつもの応援歌を背に、背番号5が左打席に立つ。リードオフマンの一振りから、リーグ連覇の道は始まる。【柏原誠】