サッカーの神奈川県社会人1部リーグFIFTY CLUB(フィフティークラブ)でプレーする、愛称「ジャンボ」こと190セン…

サッカーの神奈川県社会人1部リーグFIFTY CLUB(フィフティークラブ)でプレーする、愛称「ジャンボ」こと190センチのFW大久保哲哉(45)が、自身6度目の関東2部昇格戦に挑む。昇格戦を兼ねる「関東社会人サッカー大会」が14日に開幕。今季もリーグ17試合8得点8アシストと活躍した大型ストライカーにあるのは、昨季の屈辱とゴールへの情熱だった。大先輩、三浦知良(58)の金言も力に変え、チームを勝利に導く。

昨年11月16日も、昇格を懸けて臨んだ同大会。チーム初の準決勝に進んだが、0-0の後半、相手のSHIBUYA CITY FCに痛恨のゴールを浴び、力尽きた。

「準々決勝では自分のゴールで新しい1歩、チームとしての歴史は塗り替えられたけれど、昇格を目標にしてやっている。そこを達成できなかった悔しさが残った」

ピッチで肩を落とすイレブンに、大久保も唇をかんだ。このクラブに加入してから19、21、22、23年と昇格戦に挑んできたが、過去2大会はPK戦で涙をのんでいた。「5度目の正直」もかなわなかった。それでも-。

「もう1回、やってやろう」

J通算99得点を誇る大型ストライカーの、不屈の精神が再燃した。

雪辱を期した、今年3月開幕の神奈川県1部。これまでは、ほぼ全試合に先発出場していた大久保だったが、今季は全選手の出場機会を増やすチーム方針により、スタメン出場回数が昨季と比べて半減した。

「コンディション調整がすごく難しい。メンタルが一番難しいんですけど『スタメンなのか、サブなのか』って、選手にとって永遠のテーマだと思う」

長年、先発を張っていただけにベンチスタートには久しぶりだった。しかし「サッカーに対する情熱や、自分がゴールして勝つ情熱は全く衰えていない」とブレなかった。

その感情を思い出させてくれたのは、古巣の横浜FC時代から背中を追う、日本サッカー界不世出の「キング」カズの言葉だった。

「サッカーに対する、ゴールに対する情熱を忘れるな」-。

シーズンイン前、連絡を取った時にもらったアドバイスが今季の原動力となっている。年齢を言い訳にせず、常に青天井の向上心でピッチを駆けるレジェンドの姿に、大久保も「58歳の今でも信じられないけど『うまくなりたい』とか『点を取りたい』とかっていう思いが全然薄れてない」。刺激を受け、モチベーションに変えた。

プロのJリーグとは大きく異なる地域リーグでは、試合のピッチが人工芝だったり、ウオーミングアップはグラウンド外のコンクリートの上で行うことが当たり前だったり。それでも、自然体のまま今季リーグ3位のゴール数をマークできたのは、トップカテゴリーで15年間にわたり培ってきたキャリアが裏付けとなっていた。

あとは結果だけだ。神奈川2位から挑む自身6度目の挑戦。Jから数えて国内「6部相当」となる関東2部への昇格を懸けた、15日の初戦の相手は「ホリエモン」こと実業家の堀江貴文氏が立ち上げた東京1位のTOKYO 2020 FCになった。

クラブ悲願の昇格を懸けた一戦に挑むストライカーには、角野隆監督(50)も「難しいゲームになるが、守備からしっかり入って攻撃の起点となって得点を」と期待を寄せる。

大久保自身も闘志を燃やす。

「ゴールの形は正直、何でもいい。ただ、自分が点を取って勝ちたい。そこの情熱、ギラギラ感は若い頃と全く変わらないし、今年こそは角野監督を胴上げしたい」

その右足は、昇格ロードを切り開くためにある。【泉光太郎】