<大相撲九州場所>◇初日◇9日◇福岡国際センター現役引退と年寄「北陣」襲名を発表した、最高位小結の遠藤(35=追手風)が…

<大相撲九州場所>◇初日◇9日◇福岡国際センター

現役引退と年寄「北陣」襲名を発表した、最高位小結の遠藤(35=追手風)が、九州場所初日の9日、福岡市内のホテルで会見した。7月に右膝、9月に左膝と、慢性的に痛めていた両膝を相次いで手術。幕内だった5月夏場所を9勝6敗と勝ち越したのを最後に、2場所連続全休中で、九州場所は東幕下3枚目に番付を下げていた。

会見では終始、涙を見せず「悔いは一切ないです。本当に、いっぱいいっぱい、やりきりました」と、ほほ笑みながら語った。今後については「もちろん、強いお相撲さんを育てていきたい」と、胸を張って答えた。

会見の冒頭で「私、遠藤は現役を引退し、年寄北陣として後進を指導して参ります。長らく、たくさん応援をしてくださり、ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いします」とあいさつした。質疑応答の冒頭では「まだ引退したという実感はありません」と話した。続けて「手術をしまして、もう1度、土俵に戻るつもりでしたが、リハビリしている中で、気持ちが変わっていきました」と、率直に話した。

故郷石川県や会場での歓声に支えられたといい「もう1回、あの歓声を聞くんだという気持ちで、土俵に上がっていました」と、感謝した。ただ「自分の体は、自分が1番よく分かっている」といい、夏場所千秋楽の朝紅龍戦は「もしかしたら、これで、もしかするかも」と、引退するかもしれない思いがよぎっていたという。

「現役中は、手術をしないつもりでいた」という。同時に「ケガした以上、手術せずに、うまく付き合うしかないので、覚悟はしていたけど、当時からずっと、いっぱいいっぱいでした」と、ケガとの戦いに追われた土俵人生の後半戦を表現した。それでも「ケガのおかげで鍛えられたし、ケガしたことで気付いたことも多かった。良くも悪くも、ケガがあったから成長した。今が幸せです」と、話し、また笑った。

現役時代は端正なマスクに、技能賞4回という好角家好みの熟練した技術を持ち合わせ、屈指の人気を誇った。アマチュア横綱など日大で11冠に輝き、13年春場所、幕下10枚目格付け出しで初土俵。幕下を2場所で通過し、同年名古屋場所で新十両に昇進してから12年余り、関取の座を守り続けた。所要3場所での新入幕は史上最速だった。

出世の早さに髪の伸びが追いつかない、ざんばら髪の新鋭は早くから永谷園のCMに起用されるなど、広く知られる存在に成長。真っ向勝負が身上だった。今後は追手風部屋付きの北陣親方として、後進を指導する。【高田文太】