いざ秋の頂点へ-。第56回明治神宮野球大会が14日に開幕する。12年ぶり5度目出場の八戸学院大(東北3連盟)は17日の初…
いざ秋の頂点へ-。第56回明治神宮野球大会が14日に開幕する。12年ぶり5度目出場の八戸学院大(東北3連盟)は17日の初戦で、神奈川大(関東5連盟第2)-東亜大(中国・四国3連盟)の勝者と対戦する。東北代表決定戦決勝では、今春日本一の東北福祉大を6-1で下し、本戦行きを決めた。胴上げ投手に輝いた高橋正吾投手(4年=春日部共栄)が3回無失点。“遅咲き″左腕が集大成で神宮大会出場へと導いた。
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まさに陰の立役者。歓喜に湧くナインの中で高橋だけが泣き崩れていた。「回を追うごとに神宮が見えてきて、その分、重圧もありました」。肩の荷が下りると同時に、これまでの思いも重なり涙があふれた。
「圧もオーラもすごかった」。日本一の打線は見るからにひと味ちがった。先発の本格右腕と正反対の、技巧派左腕の高橋。「球は速くないので、とにかく打ち気をそらす」と丁寧に投げ込み、1安打に抑えこんだ。リーグ戦から絶対的エース小林直生(4年)の存在感が光る中、東北学院大との決勝進出決定戦2戦目では、エースのアクシデントによる緊急降板に対応。失策も絡み1点差に詰め寄られた場面で登板し、4球でぴしゃり。東北王者のためには欠かせないピースだった。
「どうしたらベンチに入れますか?」。ラストイヤーを前に新沼舘貴志監督(43)に尋ねた。そこで助言を受け、サイドスローへの転向を決意。3年まではBチーム、時にはCチームを行ったり来たり。苦しい毎日が続いた。「野球を嫌いになった時期もありました」と練習にも身が入らず、何に対してもやる気が起きなかった。「嫌いな自分を見られた気がします」と当時を振り返った。
「空白の3年」を最後の1年で取り戻した。「なんとしてもベンチに入りたい。勝利に貢献したい」。内に秘めた闘志を隠すことはできなかった。これまで貫いてきた投球フォームを変え、ようやく花開いた。4年春に初のベンチ入り。この秋は12年ぶり神宮行きに貢献する投手へと成長した。「想像もつかなかった光景です」。涙をこらえることはできなかった。
泣いても笑っても最後の舞台に「神宮でも大暴れしたい」と心待ちにする。「前の投手がつなげてくれたバトンをしっかり受け取って、チームが勝てる投球をしたいです」。まだ見ぬ日本一を-。まだまだ終われない。【木村有優】