東京ヴェルディの城福浩監督(64)が、残り3試合で最大の課題となっている得点力に本腰を入れる。8日(味スタ)の福岡戦に向…

東京ヴェルディの城福浩監督(64)が、残り3試合で最大の課題となっている得点力に本腰を入れる。

8日(味スタ)の福岡戦に向けて、東京・稲城市のクラブハウスで取材対応。2シーズン連続のJ1残留を果たした今、来季をにらみ新たな取り組みやリスクを負った戦い方もできる。その向き合うべきところが、得点力に他ならない。

勝ち点42(11勝9分け15敗)で14位のチームだが、総得点はリーグワーストの22点(35試合)。最多65ゴールの川崎Fの3分の1しかなく、リーグ最下位の新潟より10点も少ない。この部分だけみれば、J2に降格しないことの方が不思議だ。その分、失点数は36にとどめ、クリーンシート数は17試合の柏に続く2番目の16試合。妥協なき指揮官のもと、チーム全体で靴一足分のアプローチにまでこだわり、積み上げてきた賜物だ。

次節の福岡も3試合連続無失点中と堅固なディフェンスを誇るだけに、得点を狙う上で格好の相手とも言える。さまざまな選手の配置転換も敢行している中、新たな形が期待される。

「数字で言えば得点力っていうことなんですけど、一番大きなファクターであることは事実。ただ、それは攻撃だけの問題でなくて。いい守備からの、いい奪い方からの攻撃であるとか、最後のプレーの1つ前の丁寧なパスであったりとか、クロスの質であったりとか、そういうところを改善しながらも最後は点を取りに行くバージョンっていうのは、やはり今年中にこのチームの形として見出したい。どのタイミングで入ったとしても、いい奪い方からいい攻撃をすることを、各々の出た選手の特長を出すようなチームの展開に持っていくことはやってきたつもりなんでね。誰が出てもその特長は出せる、そういう準備はしてきたつもりです」

今節は中盤の主力となるMF斎藤功佑が累積で出場停止。「満を持してというかね、悔しい思いをして準備してる選手たちがいるので。それは本当に頭から出し切ってくれる選手と、(試合途中から)バトンを受けてメラメラした思いで再点火してもらう選手がうまくつながればいいかなというふう風に思います」。

例えば、直近4試合はサブに回っているMF平川怜の奮起に期待したい。周囲を俯瞰(ふかん)し、優れたパスセンスでチームを動かせるゲームメーカー。そのセンスや実力は誰もが認めるところだが、今季公式戦36試合に出場して得点ゼロ。斎藤が不在なら、なおさら平川に期待するものは大きくなってくる。

城福監督は「彼が持っている技術、サッカー観とかフィジカル的なものを合わせた中で、まず要求したのが、このチームで試合出るためには、今までの守備の常識を全てにおいて変えてほしいという話はした。それが試合に出る一番の近道だという話はしました。そこはやり続けてくれていると思います」。

そう話した上でこう続けた。

「彼が持っているサッカー観とかビジョンとか、視野の広さをもう1つ広げるというか。それがボールの止め方であったり、見るところだったりもそうなんですけども、ボールを触る場所がもう5メートル低ければ、もっとヘッドアップしてもっと奥が見えるし、もう5メートル前であれば、今度は(ゴールに向かって)足が触れるんですよね。そこが本当に点を取りに行く時のポジションと、本当にいい展開をする時のポジションっていう、その5メートルのこだわりっていうのを。(立ち位置を)取っていないわけじゃないんですけど、常にこだわりながらボールに触るというか、そこをやってくれれば、展開力と彼自身の振りの力(シュート力)であったり、このチームを助ける得点力をアップさせるっていうところにもつながってくると思う。そこのポジショニングと(ボールを)止めた時にもちろんゴールを意識できるのが一番いいですけども、ゴールから遠い時にどこを見られるような状況にするかというところは、もうかなり我々も言い続けています。彼も意識してやり続けてきてくれているので、ゲームの中でそれを表現してもらいたいなというふうに思います」

こちらの見立て通り指揮官もまた、平川の展開力と一撃に期待していた。

そしてチームがここからの3試合で取り返したいもの-。それはリスクを背負って前に出て行くこと。果敢にボールを奪いにかかり、積極的にゴールに向かって仕掛ける姿をファン・サポーターに見せたい。

「ボールは握りたいですし、それが相手陣でやれればもっといいですし、そのためには相手陣でボールを奪うところからスタートできればもっといいと。じゃあ今年我々がアベレージ高くこれをやり続けられたかということと、バトンの受け渡しのところで再点火、我々の望むような再点火ができたかっていうと、やりきれてないですよね。やりきれてないって言い方がいいか。まだまだ追求しなきゃいけないものがあると思う。今年本当に目指そうとしたものが何なのか、見に来た人がバトンの受け渡しってこういうことなんだなとか、そういうところがこう伝わるような3試合にしないといけない」

今季35試合のうち19試合(54・3%)が無得点ゲーム。まるで出なくなったケチャップのようだった。残留が決まったことで、心理的な足かせは薄らいだ。若きチームゆえのチャレンジングな姿勢をもって挑もうとしている。

ただ残留が決まったことで、指揮官が懸念するのは「ホッとすること」だという。チームとしての目標が定まらず、個々が責任のないプレーを選択し合うようになったらチームは崩れるという。「非常に緩いような試合。チームとして勝つために必要なハードワークではなくて、やりたいことにエネルギーを使うような、そんな色合いが濃くなってしまうことが、ハンドリングが間違えたらありうると思います」。

ここまで紙1枚、1枚を積み上げるようにチームを作り上げてきた。選手以上に“頭から湯気”を出して取り組んできたのが城福監督だった。

残り3試合。来季につながるような姿を見せられるのか。反骨の指揮官の真骨頂は、ここからが本番のようだ。【佐藤隆志】