専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第129回 最近、大きなコンペがあって、事前に「ハンデキャップを提出してくれ」と言われました。招待状の中に、ご丁寧にハンデを書き込む返信用ハガキまで入っていました。 こういうと…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第129回

 最近、大きなコンペがあって、事前に「ハンデキャップを提出してくれ」と言われました。招待状の中に、ご丁寧にハンデを書き込む返信用ハガキまで入っていました。

 こういうときは、オフィシャルハンデ「12」、プライベートハンデ「9」と書いて、送り返すようにしています。

 もちろん、今はそんな実力なんてありません。確か15年ぐらい前は、オフィシャルハンデ「12」で、瞬間的に「9」になったこともあります。

 じゃあ、かつての栄光を装い、見栄を張ってハンデを出しているのか? そういう考え方もありますが、むしろ逆です。

 もし、今はヘボで「ハンデ『18』くらいです」なんて返信したら、優勝する可能性も出てきます。そうすると、優勝賞品欲しさに「ハンデを甘く出したせこいヤツ」って見られてしまうのです。

 つまり、正直に自分のハンデを書くと、嫌なヤツとか、空気を読めない男とか、そんな扱いを受けてしまうわけです。それって、なんかおかしいですよね。

 こちらはJGA(日本ゴルフ協会)の正式ハンデすら持っていないのに、「ハンデを書け」というのもどうしたものか……。アマチュアゴルファーのピークなんて、人それぞれでしょうし。

 まあ、結局のところ、大きなコンペの世界では自分の腕前をうまく見せて申請することが、マナーであり、大人の社交なのです。

 過去に、わけもわからずにハンデを「16」くらいで出して、大きなコンペに臨んだことがあります。そのときは絶好調で、クラブ競技にも出ていて試合慣れしていたこともあって、ぶっちぎりの成績を残しました。ところが、2位に4打差をつけて優勝と思ったら、「初参加者は優勝資格なし」だと。

 世の中、うまくできているんですね。このように、場をわきまえない”暴走ゴルファー”をたしなめるため、初参加には優勝資格を与えないんですから。おかげで、次回参加したときにはハンデをめちゃくちゃ減らされて、それ以降も永久に優勝しないよう、私の存在は封印されてしまいました……。

 大人の世界は汚い! いや失敬、厳しいです。というわけで、最近のハンデキャップの諸事情を少々綴らせていただきたいと思います。

 世の中のスポーツを含めたあらゆる勝負ごとには、すべてランクや段位みたいなものが存在していますよね。けど、そのランクや階級は実に怪しいものです。

 最近の話題で言えば、将棋の加藤一二三九段が、藤井聡太四段のデビュー戦で負けています。

 加藤九段は元名人です。神武以来の天才と言われるぐらい強かったのです。でも、年齢的なこともあり、藤井四段と対戦したときには、九段の実力があったかどうか、甚だ疑問です。

 まあ、そもそも柔道や剣道などの武道、さらに書道や将棋など、日本で「道」を極めるものは、いただいた段位は滅多に下がりません。段位というのは、名誉的な意味合いが強いのでしょうね。

 ゴルフの世界も、プロゴルファーは一度プロになったら、引退するまではずっとプロです。アマチュアに降格した、なんて話は聞きません。

 でも、プロと言っても鍛錬をやめてしまえば、その実力は落ちていきます。我々のようなアマチュアとコンペで一緒にプレーしているプロもいますが、たまに80台を出しますし。本人は申し訳なさそうにしていますが、トーナメントで見るプロの実力とはかけ離れており、元気のいいトップアマの格好の餌食となっていますね。

 そう考えますと、アマチュアのハンデだけ不公平だと思いませんか?

 せっせとスコアカードを出して、やっとの思いで月例競技などで優勝してシングルハンデになったとしても、ちょっと休んでいたり、2、3カ月調子が悪かったりして、スコアを叩き出したら、シングルハンデから陥落ですから。しかも、そこからまたシングルハンデに返り咲くなんて至難の業ですよ。

 私なんか、人生でシングルだったのは、たったの3カ月でした。明智光秀よりはマシですが、3カ月天下ですよ……。その後は、落ち武者のようになって、野原を駆け回っております。

 そこで、提案があります。プロもアマも、ハンデや階級に対する認識や制度を統一化しようではありませんか。

 アマチュアに常に実力相応のハンデを強いるなら、プロも成績の悪い人はプロテストを受け直しさせる。それが、平等ってものでしょう。

 でも、これは現実的じゃない選択です。プロゴルファーから大ひんしゅくを買うでしょうからね。

 多くのプロゴルファーは、賞金ランキング上位を目指して血眼になって努力しているのに、稼いでいないとプロの資格は剥奪なんて、そんなことは許されない、とね。こっちは仕事なんだから、と。

 それでは、こういうのはどうでしょうか?

 アマチュアのハンデは、従来どおりのシステムを残して、流動性のあるものにする。ただその他に、最高ハンデを段位制にして、名誉を永久に称えるってものです。

 段位制では、最高ハンデ「9」を初段にします。そして、ハンデ「8」が二段、ハンデ「7」が三段……といった具合です。その反対側も、ハンデ「10」が一級、ハンデ「11」が二級、ハンデ「12」が三級……と、以下ずっと、ハンデに合わした級を与えていく感じです。

 今の私なら、オフィシャルハンデ「18」、ゴルフ段位が「初段」ということになります。

 これなら、いいなぁ~。なんかうまくなったような気がして、今までの努力が報われたような気がしてきます。

 ゴルフは西洋のスポーツですが、日本では他の「道」を究めるものと同様、「ゴルフ道」として扱ってあげればいいのです。人間、死ぬときは「黒帯」の段位で終わりたいじゃないですか。日本の武道のシステムは、非常に人間的な優しさに包まれているように思います。

 航空会社のマイレージシステムでは、いっぱい飛行機に乗った人は優先的にラウンジを使えたり、優先的に搭乗できたりと、至れり尽くせりです。

 同じように日本のゴルフ界も、トータル500ラウンドした人は名誉シングルを与えるとか、割引プレーができるとか、なんかやってくださいよ。大きなゴルフチェーンなどでは、ポイント制をやっていますが、JGAなども絡んで、もっと大掛かりに、いろいろなサービスを仕掛けていってもいいと思うんですが……。



ゴルフにも

「段位」があったらいいかもしれませんね

 いいですか、何度も書きますけど、アマチュアゴルファーというのは、「ヘボに始まり、ヘボに終わる人生」なのです。最後のゴルフ人生は、いつも100叩きばっかりです。

 そうなると、今までせっせとコースに通って、コンペで優勝して、月例でも勝ってきた自分のゴルフ人生は何だったのか?って、寂しい思いばかりが募ってしまいます。アマチュアゴルファーは所詮、趣味の世界なんですから、段位制を採用してその”名誉ハンデ”を一生の宝物にしたっていいじゃないですか。

 何の証明書もなく、「昔、お爺さんはゴルフがうまかったんだぞぉ~」と、孫に自慢しても理解してもらえないなんて、悲しいじゃないですか。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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