「ロレックス・パリ・マスターズ」の決勝戦から一夜が明けて、「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」「ATPワールドツアー・ファイナルズ」がいよいよ目前に迫ってきた。決勝戦で勝利してタイトルを手にしたジャック・ソック(アメリカ)が「A…

「ロレックス・パリ・マスターズ」の決勝戦から一夜が明けて、「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」「ATPワールドツアー・ファイナルズ」がいよいよ目前に迫ってきた。

決勝戦で勝利してタイトルを手にしたジャック・ソック(アメリカ)が「ATPワールドツアー・ファイナルズ」への出場枠にギリギリで滑り込んだ一方で、「幻の記録」が生まれそうだった。ATPがサイトで詳細を紹介している。

同サイトによれば、渦中にいたのはパリ・マスターズで、ソックと決勝戦を戦ったフィリップ・クライノビッチ(セルビア)で、ともすれば1シーズンの間にチャレンジャーツアーとマスターズ1000のタイトルを勝ち取っていたかもしれない。

ただ、クライノビッチのこの記録に可能性を開いたのは、くしくも、彼自身の苦境でもあった様子だ。その一つはプロにつきものの問題だという。

「大変苦しみましたし、今までのキャリアでも多くの怪我を経験してきました」とクライノビッチは回想する。特に今シーズンの開始時点では、右手首の過剰骨の手術からの復帰を目指す、トップ200位より後方の234位から再スタートを切らなければならなかった。

クライノビッチはこの復帰について「冷静でいつの日か、全部元に戻るだろうと知っていました。でも、それが今年、この大会になるとは思ってもみませんでした」とするものの、スポンサーからも「ノー」を突きつけられたことを明かしている。

「精神的には厳しいものでした。本当に大変でしたが、家族はわたしの側にいてくれて、今はここにいられるんです」(クライノビッチ)

その中で、クライノビッチは、チャレンジャーツアーを中心に、現時点までに27大会に参戦。今年のチャレンジャーレベルで最多となる47勝をあげ、5つのタイトルを勝ち取る結果を手にした。他方で、ATPワールドツアーレベルへの参戦数は驚くほど少なく、マスターズは今回の1大会だけだ。

「ロレックス・パリ・マスターズ」はその一つだったもので、クライノビッチ自身は、「予選から勝ち上ることができ、素晴らしい気持ちです」と、自身のパフォーマンスを振り返る。

パリ・マスターズはクライノビッチにとってシーズン2度目となるトップレベルの大会だったもので、予選から勝ち上がって決勝戦までたどり着いた。

実際のところ、ラファエル・ナダル(スペイン)の途中棄権などラッキーでもあったが、第10シードのサム・クエリー(アメリカ)や第9シードのジョン・イズナー(アメリカ)といった、名実の伴う選手を破ってきており、幸運だけで勝ち上がってきたわけではないだろう。

パリ・マスターズの決勝戦でも、ソックから1セットを先取し、そのまま勢いに乗ればタイトルを手にできそうな序盤の展開だった。が、ソックが最後は盛り返して、5-7、6-4、6-1として、クライノビッチは、パリ・マスターズを準優勝の成績で終えた。振り返れば、「1シーズン中にチャレンジャーとATPマスターズ1000のタイトルを獲得」という記録は幻だったが、クライノビッチは手術からの復帰を十分に印象付けたといえるだろう。

クライノビッチ自身も「今年の目標は、チャレンジャーツアーでポイントを、これらプレーヤーと対戦することでした。小さなトーナメントでポイントを手に入れたいと思っていて、実現できました」としている。

そして「今、私は世界トップ40ですが、それも期待していませんでした。目標は、 今年の終わりに トップ100に入ることでした。ただただ幸せで、その気持ちが大きいです」(クライノビッチ)とした。(テニスデイリー編集部)

※写真は「ロレックス・パリ・マスターズ」の決勝戦を前に入場するフィリップ・クライノビッチ

(Photo by Dean Mouhtaropoulos/Getty Images)