2年後の自国開催ラグビーワールドカップへ向けて、希望を抱かせるビッグチャレンジとなった。 日本代表は11月4日、神奈川・日産スタジアムで4万3621人が観戦するなか、ワールドカップ優勝2回(前回の2015年大会は準優勝)の戦績を誇る現世界…

 2年後の自国開催ラグビーワールドカップへ向けて、希望を抱かせるビッグチャレンジとなった。
 日本代表は11月4日、神奈川・日産スタジアムで4万3621人が観戦するなか、ワールドカップ優勝2回(前回の2015年大会は準優勝)の戦績を誇る現世界ランキング3位のオーストラリア代表“ワラビーズ”とテストマッチをおこない、30-63で敗れた。しかし、“ブレイブブロッサムズ”の愛称を持つ桜の戦士らしく最後まで果敢に挑み続け、後半40分間のスコアは27-28と、互角にわたりあった。

「たくさんのファンに感謝。ジャパンは成長している段階。この試合のテーマはひとつしかなかった。勢い。モメンタム。それをどうコントロールするか。世界トップ4と戦って、自分たちのレベルがあらためてわかった。前回(世界選抜戦後)も言ったが、このチームでこのレベルを経験できたことが大きい」
 ワラビーズ戦後、日本代表のリーチ マイケル主将はそう語った。もちろん、相手に9トライを許した反省を忘れない。
「ここ数週間、ディフェンスの練習をしてきて、少しずつ良くなってきたが、1対1のタックルの力がまだ足りない。いいところもあった試合だったが、残念な試合。これをベースにして成長していきたい」

 日本は序盤、反則から立て続けに3トライを奪われた。
 5分、敵陣深くに入ったオーストラリアは、ラインアウト、モールからボールを動かしてタテへの突進もはさみながら徐々に日本の守りを崩し、CTBサム・ケレヴィが先制。10分も22メートルライン内でラインアウトからの攻撃となり、内返しのボールをもらったWTBヘンリー・スペイトが鮮やかに抜け、会場をどよめかせた。23分にはローリングモールからHOタタフ・ポロタナウが抜けて3トライ目。

 先週末の世界選抜戦でブレイクダウンを課題とした日本は、怪我から戦列復帰したNO8アマナキ・レレイ・マフィや、初キャップのLO姫野和樹らが激しくファイトしてチームを元気づけ、重点的に取り組んでいる新たなディフェンスでも全員が速く前へ詰めてワラビーズにプレッシャーをかけたが、32分、外にいたCTBテヴィタ・クリンドラニにつながれて、点差を広げられた。
 前半終了前には、キック後にカウンターアタックを許し、クリンドラニが連続トライ、3-35で折り返した。

「前半は規律を守れず、スクラムも押され、プレッシャーを受けた。あれだけのペナルティーをすると厳しい。ターンオーバーが多い試合となり、互いにコンタクトでボールを失った。ジャパンは大きな選手を止めきれず、オフロードで勢いを与えてしまった。ティア1(強豪国)との戦いの課題はそこ」(日本代表 ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ)

 しかし、32点を追う日本は後半早々、反撃する。ゴール前でスクラムのチャンスを得、持ち出したNO8マフィがゴールに迫り、ピックアップしたLOヴィンピー・ファンデルヴァルトが仲間の後押しを受けてインゴールにねじ込んだ。TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)後、この試合がテストマッチデビューとなったファンデルヴァルトの初トライが認められた。

 だがその後、PGで得点を重ねた日本だが、2週間前に世界ランキング1位のオールブラックス(ニュージーランド代表)を倒しているワラビーズは勢いがあった。
 50分(後半10分)、WTBスペイトが自陣からタックラーを次々とかわして防御網を破ると、FBカートリー・ビールがサポートし、ボールをもらったCTBケレヴィがゴールへ走り切り、日本を突き放した。
 56分には、スクラムで日本の反則があって敵陣深くに入ると、ラインアウト、モールから展開し、CTBケレヴィがダブルタックルを受けながらもオフロードでつなぎ、クリンドラニがハットトリック。日本は辛抱強くディフェンスしていたものの、62分には自陣深くでプレッシャーをかけられ、ボールをコントロールできず失点する。65分にはLOロブ・シモンズに9トライ目を奪われ、47点差をつけられた。

 しかし、ブレイブブロッサムズは闘志を失わなかった。

 68分、ラインアウトからモールで押し込み、NO8マフィがトライ。
 74分にはテンポのいい連続攻撃からCTBシオネ・テアウパがゴールへ突っ込み、グラウンディング寸前に落球するも、ファンの声援が桜の男たちを後押しした。そして試合終了前、ゴール前スクラムからラストアタックとなり、23歳のニューフェイス、姫野がリーチ主将のサポートを得ながらタックラーを払いのけてトライを取り切り、4万人を超える観衆の大歓声を浴びた。

 ジョセフ ヘッドコーチは「4万3000人の観客。ワールドカップがどういう中でおこなわれるか、多くの人が知ったと思う。トップチームの試合がどうなるのかも、知ったと思う」」と語る。
 そして、フル出場で奮闘した初キャップの姫野については、「ハードワークしてくれた。リアルLOではないが、ワークレートも高い。よく頑張ってくれた。前半はミスもあったが、強豪のレベルによるもの。トライを取って自信にもなっただろうし、いい経験にもなった」とコメントした。

 ワラビーズのマイケル・フーパー主将は日本代表について、「素晴らしいスピリットのもとプレーされた。フィジカルだったし、とてもスピードがあった。ブレイクダウンでも素晴らしかった。ただ、我々に流れが向いたところも多かった。80分プレーする力はあったと思う。最後の20分はジャパンがドミネート(支配)していたと思う」と称え、「ここ(2019年ワールドカップ決勝の会場)でやれたことは大きい。日本で初めて日本代表と戦うテストマッチだったが、タフな試合を楽しんでやれた」と語った。

 マイケル・チェイカ ヘッドコーチは「いい雰囲気の中でのテストマッチだった」と振り返り、SOで初出場となったリース・ホッジについては、「ジャパンのプレッシャーはいい経験になったと思う。しかし、いい判断をしてくれた。SOの層を厚くしてくれるだろう。最後は疲れていたようだったけれど」と語り、新たなオプションに可能性を感じていた。
 30失点したことについては、「3トライ奪われ、全体で見たときに多いか少ないか、どうとらえるかは微妙だ。ただ、ペナルティーを与えすぎたかもしれない。ゴールライン付近でのディフェンスは苦しんだが、全体的なディフェンスは悪くなかった」と評価する。日本代表については、「キャプテンのコメントに同意する。コンタクトエリアでのレッグドライブが良かった。ラインスピードも」と語った。

 そして、日本代表のリーチ主将は、「みんなが勝ちにいくメンタルがある。準備も全力を尽くしている。それなのにこういう結果になるのは、試合中のマネジメントが問題。規律の部分も。試合中の判断をトップ4相手にはしっかりしないと勝てない。(テストマッチと)トップリーグではフィジカルがマッチしていない(ことも原因のひとつ)。もう少し強化の時間があったら変わる。チームは首脳陣も選手も同じ方向を向いている」と話し、来週から出発するフランス遠征でのトンガ代表戦とフランス代表戦、そして2年後のワールドカップを見据えた。