専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第127回 アマチュアゴルファーの”三大悲願”は、「クラブチャンピオン」「ホールインワン」「エージシュート」と言いますが、それぞれ、そんなにすごいことな…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第127回

 アマチュアゴルファーの”三大悲願”は、「クラブチャンピオン」「ホールインワン」「エージシュート」と言いますが、それぞれ、そんなにすごいことなのか。もろもろ、検証してみたいと思います。

 この中で、シングル以上の腕前が必要なクラブチャンピオンは、すでにエントリー資格がないので、パスです。というか、倶楽部のメンバーなどには入っておらず、日頃は仲間内などでゴルフを楽しんでいる一般的なアマチュアゴルファーには無縁の話。そういう意味では「かなりすごいこと」と言えますね。

 ちなみにクラブチャンピオンは、各倶楽部によって参加基準が決まっています。ある倶楽部では、ハンデ「12」以上のAクラスとか、ハンデ「10」以上とか、ですかね。その上手な参加者たちが予選を行なって、上位32名が決勝ラウンドに勝ち進み、そこからマッチプレーでサシの勝負となります。もちろん、ハンデはありません。

 ゆえに、クラブチャンピオンは単にゴルフがうまいだけではなれません。高校野球の甲子園大会に臨むようなもので、チャンピオンになるには1敗もできませんから、運も味方にしないと無理ですよね。

 そんなわけで、普通のアマチュアが狙えるのは、運だけの「ホールインワン」と、超長生きすれば、誰にでもできるかもしれない「エージシュート」ですが、これらもかなり手強いです。実際のところ、なかなか経験することはできません。

 ちょっと話は逸れますが、先日、ゴルフ仲間がホールインワンを達成していました。彼は知り合いの漫画家さんに描いてもらったという、本人のイラスト入りのクオカードを配っていました。クオカード代だけで1000円。それを100枚以上は配っていましたから、大した出費ですね。

 めでたい話ですから、コンペ仲間の幹事が気を利かせて「ひとり、5000円ずつ出して、何か記念品でも贈ろう」と発案し、コンペ仲間に呼びかけました。しかし、その案には誰も賛成せず、廃案に……。

 なぜかというと、その人のホールインワン保険は100万円。それを資金にして、すでに何十万円分のお祝いコンペや宴会をやってしまっていたのです。ですから、保険金の存在と残額を知っている仲間たちは、むしろ「おまえがキャバクラでも奢れよ~」って、感じだったわけです。

 ところで、ホールインワンって、お祝いをあげるものなのか、あるいはお祝いをいただくものなのか。そこは、悩みどころです。

 その参考になる答えは、ホールインワン保険に入っているかどうかが、基準になります。保険に加入していれば、達成者からお祝いをいただくのが通例でしょうね。

 以前、私もホールインワン保険に入っていました。それは、月1000円の掛け金で、ホールインワンを達成した場合、保険会社が50万円相当のお金を賄うというものでした。かれこれ20年ぐらい続けて、トータル20数万円は払ったのですが、一向にホールインワンは出ませんでした。

 一発で穴に入れられない自分が悪いのですが、ここで逆転の発想をします。「保険を解約したら、ホールイワンを達成した」なんて話をよく聞いたので、すぐに解約することにしました。が、それからはや5年、いまだホールインワンの夢は達成されていません……。

 かつて、ホールインワンを達成したにもかかわらず、保険に入っていなかった漫画家の先生がいました。その先生は、やはりクオカード、当時だとテレホンカードでしょうか、その類いのものを配ってごまかしていましたね。たぶん、今私が達成しても、そんなもんかなと思います。

 それにしても、100万円の保険っていうのはデカいですよね。「キャバクラ代は落ちるのか?」「もっとエッチな店はどうなんだ?」と、ホールインワンを達成した友人に根掘り葉掘り聞きましたが、風俗系は行っていないので、わからないとのことでした。なので、ホールイワンを達成して夜の街へと出陣する場合は、「風俗でもホールインワン保険が降りるのですか?」と、恥を忍んで保険会社に聞いてからにしてくださいね。

 ちなみに家族旅行や、ホールインワン達成時の同伴メンバーとの再ラウンドとかは、すべて保険で賄ったそうです。唯一自腹を切ったのが、キャディーさんへのご祝儀。自分のホームコースだったので、見栄もあったのでしょう。1万円をポケットマネーから出したとか。これは、仕方がないでしょうね。

 話を戻しますが、やはりホールインワンも「すごいこと」です。自分もそうですが、周囲で達成したという話を頻繁に聞くことはありませんから。

 統計的には、ホールインワンの出る確率は約1万2000分の1だそうです。1回のラウンドでショートコースが4つあると計算するなら、3000ラウンドに1回、ということになります。

 自分は過去、年間50ラウンドを25年やってきましたから、やっと半分弱まで来たんですね。パチンコで散々つぎ込んで、大当たりがまだ来ない、みたいな心境でしょうか。今は年間20ラウンドがいいところなので、死ぬまでに達成できるかどうか、微妙です。

 今回の友人のホールインワンは、結構いい当たりをして、順当にカップに入ったそうです。普通はそうですよね。けど、ミスショットで入った方もおられます。

 昔、作家の安部譲二先生はあまりよろしくない当たりだったのですが、いろいろなところに当たって、結果ホールインワンになったとか。ピタゴラスイッチ的ホールインワンと申すべきでしょうか。それでも当時、ホールインワン達成を盛大に祝ったそうですよ。

 一方のエージシュート。自分の年齢以下のスコアを出すことですが、おそらく90歳を過ぎても普通にゴルフをやっていれば、達成する可能性は高くなると思います。なにしろ、「ワシは毎月エージシュートを出しているから」なんて言っているお爺さんを、ゴルフ雑誌などではよく見かけますから。

 とはいえ、90歳を過ぎてもゴルフって、なかなかできませんよ。エージシュートも本当に「すごいこと」だと思います。

 葛飾北斎も90歳まで長生きして、「あと5年、天が命を与えてくれたなら、本物の絵描きになれた」と言っていました。ならば、多くのアマチュアゴルファーは、北斎に習って、「あと5年、ゴルフができたなら、エージシュートができたのに~」と悔やみつつ、旅立とうではありませんか。

 最後に話をまとめれば、ホールインワンは偶然を待つだけ。エージシュートは長生きできるかどうか。そして、クラブチャンピオンは最初から無理な話ということ。やっぱり、アマチュアの”三大悲願”というのは、どれもすごいことですよね。

 と、人生を達観するのはいいのですが、最近は高齢化社会になって、シニアやグランドシニアのクラチャンや競技会というのが増えています。そこで活躍する、というテはあります。

 プロのシニアは50歳以上ですが、アマチュアは60歳ぐらいから。そうなると、グランドシニアは70歳とか75歳ですよ。その年齢に達すれば、単にゴルフがうまいだけではエントリーさえ難しいでしょう。



グランドシニアの競技会に出場できるっていうのは、本当にすごいことですよね

 紆余曲折の人生にあって、財力、健康、腕前の三拍子がそろわないと、グランドシニア競技にはエントリーできません。まさに人生を賭けた”サバイバル競技”。みなさん、そこを目指してみませんか?

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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