三つ巴、四つ巴、五つ巴の激しいバトルで、トップグループのライダーたちによる固唾を呑むギリギリのオーバーテイクがコース上の至るところで繰り広げられた。この激しい集団バトルもまた、オートバイレースならではの醍醐味だ。激しいバトルを繰り広げ…

 三つ巴、四つ巴、五つ巴の激しいバトルで、トップグループのライダーたちによる固唾を呑むギリギリのオーバーテイクがコース上の至るところで繰り広げられた。この激しい集団バトルもまた、オートバイレースならではの醍醐味だ。



激しいバトルを繰り広げたビニャーレス(左)、マルケス(中央)、ロッシ(右)

 第16戦・オーストラリアGPの決勝レースは、ランキング首位のマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)とバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)、マーベリック・ビニャーレス(同)、ヨハン・ザルコ(モンスター・ヤマハ Tech3)、アンドレア・イアンノーネ(チーム・スズキ・エクスター)たちが入り乱れて、互いに前を奪い合う大接戦となった。

 1週間前の第15戦・日本GPでは、マルケスとランキング2位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)が最終ラップの最終コーナーまで1対1の真っ向勝負を続けて観客を唸らせた。1週間後のフィリップ・アイランド・サーキットでは、そのときとはまた異なるレース展開で、トップクラスのライダーたちがハイスピードコースの特性と自分たちのスタイルを最大限に活かして、イチかバチかの勝負を続ける集団バトルになった。

 ポールポジションを獲得したのは、このコースを得意とするマルケスだったが、序盤にレースをリードしたのは地元出身の22歳、ジャック・ミラー(EG 0,0 Marc VDS/ホンダ)だった。右脚を骨折して3週間前に8本のスクリューで固定する手術をしたミラーは、前戦の日本GPを欠場し、今回のホームGPでレースに復帰。ウィーク初日のフリー走行から3番手につける速さを見せて、日曜の決勝でも4周目までトップを走行した。手術直後とは思えない力強い走りで、オーストラリアの地元ファンをおおいに沸き立たせた。

 5周目にはロッシが前を奪い、やがてザルコがロッシをオーバーテイクして9周目にトップへ浮上。レース終盤が近づくと、ビニャーレスも彼らをパスして一時は先頭に立った。後ろから追いついてきたイアンノーネも、隙あらば前に出ようと虎視眈々と狙う状況で、周回ごと、コーナーごとに、彼らの順位はめまぐるしく入れ替わった。

 そのような熱い戦いのさなかでも、冷静に機をうかがっていたのがポイントリーダーのマルケスだ。

「今日はとことん我慢を続けて、終盤の残り7~8周あたりからプッシュしはじめた」と、マルケスはレースを振り返った。

「ここが攻めどころだと思ったので、少しずつ差を開いていった。(トップ争いの他車より)0.2~0.3秒ほど速かったから、それで最後の2周は少し楽になった」

 今季6勝目を挙げたマルケスは、この優勝でさらに25ポイントを加算した。

 2位争いは最終コーナー立ち上がりの加速勝負になり、ロッシ-ビニャーレス-ザルコの順でゴールラインを通過した。3台のタイム差は、わずか0.043秒。いわば髪の毛ひと筋ほどの差だ。

 一方、前戦でマルケスに11ポイント差まで迫ったドヴィツィオーゾは、ウィークを通して苦戦し続け、決勝レースは13位。3ポイントの加算にとどまった。

「ラスト8周でタイヤが終わってしまったとか、いろいろな要素があるけど、要するにこのコースに必要な旋回性を存分に発揮することができなかった」と、ドヴィツィオーゾは厳しい結果で終えた第16戦を振り返った。

「今年は今まで厳しかったコースでもいい争いをできてきたけれども、特に旋回性が重要なこのサーキットでは、自分たちにはまだ限界があることがわかった」

 マルケスとのポイント差は、これで33ポイントに広がった。残りは2戦だが、まだまだチャンピオンはあきらめないと、ドヴィツィオーゾは明るい口調で締めくくった。

「ポジティブに考えたい。もちろん状況は厳しいけど、このスポーツではどんなことが発生しても不思議じゃないから」

 今週末に行なわれる第17戦・マレーシアGPでは、昨年は雨のレースでドヴィツィオーゾが優勝。マルケスは2014年にポールポジションからスタートして勝利を飾っている。日曜のレースで両者のあいだに26ポイント以上の差が開けば、マルケスの年間総合優勝が決定する。