猛暑に代表される「気候変動」が日本はもちろん、地球規模で大問題になっている。サッカーもその影響を免れることはできず、ア…

 猛暑に代表される「気候変動」が日本はもちろん、地球規模で大問題になっている。サッカーもその影響を免れることはできず、アメリカで開催中のクラブW杯でも、突然の落雷などで試合が2時間近くも中断するなど、さまざまな実害が出ている。“世界最大のスポーツの祭典”であるワールドカップだが、今後も開催できるか分からないと警鐘を鳴らすのは、サッカージャーナリスト大住良之氏だ。ワールドカップ、ひいてはサッカー競技を守るために、我々は今後どうすればいいのか? 大住氏が「開催日程」の変更などを含めた、大規模な「構造改革」を提案する!

■7月8月じゃ「足りない!」

 暑さも雷も、元は同じだ。異常と言っていい気温の高さにある。高温によって生まれた急激な上昇気流から積乱雲が生まれ、雷を発生させる。ついでに言えば、近年さまざまな国で頻発している山林火災も気温の異常な高さが原因だ。19世紀以来の人類の経済活動によって大気中の二酸化炭素が増加し、それによる「温室化」現象が、近年の「異常気象」の根本的な原因であるというのが、現在の定説だ。

 こうした中、危機にさらされているもののひとつがサッカーだ。日本サッカー協会は、昨年から原則として7月と8月の2か月間の日中の公式戦を取りやめにしている。しかし、昨年や今年の気候を考えれば、この2か月間だけでなく、6月も9月も、すなわち4か月間にもわたって、昼間の試合をするのは無理になってしまったように感じる。

■客席も冷房の「快適な大会」

 そのような状況に大きな影響を受けるのが、ワールドカップではないだろうか。

 ワールドカップは、原則として6月から7月にかけて行われることになっている。これは欧州のクラブサッカーのシーズンオフに合わされているためだ。だから北半球の大会だけでなく、南半球の大会でも、時期は変わらなかった。高地と暑さが重なった2回のメキシコ大会(1970年、1986年)も、開催時期は変わらなかった。

 ワールドカップが雪に見舞われた記憶はない。しかし、南半球の大会では6~7月は冬に当たり、寒さに震えたワールドカップもあった。とくに1978年のアルゼンチン大会の前半戦は、非常に寒かった記憶がある。

 その初めての例外が、2022年のカタール大会だった。6~7月のカタールは日中の気温が40度からときに50度にもなる。カタールの組織委員会はピッチだけでなく、観客席も冷房して快適な大会にすると約束したが、結局11月から12月にかけて、極めて異例な時期の開催となった。

■選手の「運動量」も増えた!

 その結果、カタール大会は、皮肉なことに、近年で最も「快適」な大会となった。この時期のカタールは、日中でも気温が30度程度にしかならず、カタール政府が約束を守ってスタジアムに巨大な冷房システムを導入したため、スタジアム内は24度程度、ピッチは18度程度に保たれ、「最も快適なワールドカップ」となったのである。選手たちの運動量が増え、強度の強い試合が続いて大会は盛り上がった。

 では、2026年の「北中米大会」はどうなるのだろうか。カナダ、アメリカ、メキシコの3か国共同開催のこの大会は、会場の16都市が、南北には緯度で30度、東西には経度で52度、ともに約4000キロの距離に散らばっている。

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