2017-2018シーズン展望@ウェスタン・カンファレンス編 歴代最強クラスの戦力を有すゴールデンステート・ウォリアーズが連覇を目指す2017-2018シーズン。もちろん、ライバルも指をくわえてそれを見ているわけではない。王者打倒を虎視…

2017-2018シーズン展望@ウェスタン・カンファレンス編

 歴代最強クラスの戦力を有すゴールデンステート・ウォリアーズが連覇を目指す2017-2018シーズン。もちろん、ライバルも指をくわえてそれを見ているわけではない。王者打倒を虎視眈々と狙う対抗馬はどこか。イースタンに続き、今季のウェスタン・カンファレンスを展望してみたい。

「イースタン・カンファレンス編」はこちら>>>



ステファン・カリーの視線はすでに今季のファイナルに向いている?

 その強さは圧倒的だ――。昨季のNBAファイナル、ゴールデンステート・ウォリアーズ(67勝15敗/ウェスタン1位)はクリーブランド・キャバリアーズと対戦。シリーズを4勝1敗で圧倒し、直近3年で2度目の優勝を飾った。しかも、プレーオフを通じて16勝1敗はNBA史上最高勝率だ。

 今季も豪華なスターターは健在。ステファン・カリー(PG)、クレイ・トンプソン(SG)、ケビン・デュラント(SF)、ドレイモンド・グリーン(PF)。そのままアメリカ代表と呼んでもおかしくないラインナップだ。

※カッコ内は昨季レギュラーシーズン成績。ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 しかもその戦力は、昨季以上と言っていい。今オフ、昨季平均13.2得点と他チームなら胸を張ってスターターを務めることができるニック・ヤング(SG)を獲得。さらにドラフト2巡目全体38位で獲得したルーキーのジョーダン・ベル(PF)はリバウンドとディフェンスを得意としており、「ドレイモンド・グリーン2世」と呼ばれるほどの高評価を受けている。

 そもそも、デュラントが加入して2年目となる今季、チームケミストリーがより向上しているのは間違いないだろう。その強さがNBA史上最高クラスであることは誰の目からも疑う余地がなく、ある意味で他チームは白旗を掲げているとさえ言っていい。

 シーズン開幕前、NBAチームのGM全30人を対象に実施するアンケートが毎年恒例となっている。このアンケートで「今季のウェスタン・カンファレンスで1位になるのは?」という問いに、30人中29人のGMが「ウォリアーズ」と回答している。さらに「今季のNBAファイナルの勝者は?」という問いにも、30人中28人がウォリアーズの名前を挙げた。

 ちなみに昨年のアンケートでも、「NBAファイナルの勝者は?」という問いの1位はウォリアーズだった。そのときの人数は30人中21人だったのだから、今季のウォリアーズの前評判がいかに高いのかがわかる。

 同アンケートで「ウェスタン1位=ウォリアーズ」としなかった唯一のGMが予想した1位はサンアントニオ・スパーズ(61勝21敗/ウェスタン2位)。現在20シーズン連続でプレーオフ進出中の「常勝軍団」スパーズは、このオフにルディ・ゲイ(SF)を獲得したことでさらに攻撃力がアップ。昨年のカンファレンス・ファイナルではエースのカワイ・レナード(SF)を欠き、それが大きく影響してウォリアーズにスウィープされたが、レナードが健在ならば違った展開が待っていたはずだ。

 他に目立った選手の移籍では、デンバー・ナゲッツ(40勝42敗/ウェスタン9位)が4年連続でオールスターに選出されているポール・ミルサップ(PF)を獲得。また、ニューオリンズ・ペリカンズ(34勝48敗/ウェスタン10位)は過去4度のアシスト王に輝いたレイジョン・ロンド(PG)と契約し、それぞれチーム力の強化に成功している。

 しかし、それでも上記3チームの補強では、ウォリアーズを上回るほどのインパクトは到底感じない。

 やはり期待を寄せたいのは、大物プレーヤーの加入で大成功する可能性も大失敗する危険性も秘めているチームだろう。それは、ミネソタ・ティンバーウルブズ(31勝51敗/ウェスタン13位)、ヒューストン・ロケッツ(55勝27敗/ウェスタン3位)、そしてオクラホマシティ・サンダー(47勝35敗/ウェスタン6位)の3チームだ。

 リーグ4年目のアンドリュー・ウィギンス(SG)と、3年目のカール=アンソニー・タウンズ(C)という「将来のNBAを担う逸材」を擁するウルブズは、このオフに昨季オールNBAサードチームに選出されたジミー・バトラー(SF)と、元オールスター選手のジェフ・ティーグ(PG)を獲得。さらに、17年間のキャリアで3度シックスマン賞を受賞しているジャマール・クロフォード(SG)も、「東の王者」キャブスからのオファーを受けていながらウルブズに加入した。

 今季のウルブズはスターターの顔ぶれが大きく変わるというリスクを背負うことになるが、バトラーも新加入のタージ・ギブソン(PF)もシカゴ・ブルズ時代にトム・シボドー・ヘッドコーチ(HC)のもとでプレーしているので、ウルブズのスタイルは理解しているだろう。昨季わずか31勝でウェスタン13位に沈んだウルブズが今季白星を大きく上積みするのは間違いなく、上位に食い込む可能性も十分にある。

 一方、ロケッツは過去4度のアシスト王・6度のスティール王に輝いた「リーグ屈指のPG」クリス・ポールを獲得し、チームを牽引するエースのジェームズ・ハーデン(SG)と新コンビを組む。

 昨季のロケッツはハーデンがPGを務め、彼のドライブからの得点、もしくはドライブからのキックアウトでスリーポイントを狙うというスタイルを徹底したことで、ウェスタン3位の座まで駆け上がった。だが、今季はPGのポールの加入によって、スタイルの変更を余儀なくされるだろう。比較的ボールを保持する時間が長いポールがハーデンと共存できるのか、疑問視する識者も多い。

 しかし、10月4日に行なわれたオクラホマシティ・サンダーとのプレシーズンゲーム初戦で、ふたりはその疑念を一掃した。両者30分弱の出場時間で、ハーデンは16得点・10アシスト、ポールは11得点・7アシストを記録し、104-97でチームを勝利に導いている。

 両選手とも得点力が総じて高く、さらにふたりで1試合20近いアシストを記録するとなれば、対戦チームにとっては大きな脅威だ。ハーデン&ポールというふたりの司令塔を擁し、バスケIQの高さをフル活用して戦うロケッツこそ、「打倒ウォリアーズの一番手」と言っていいのではないだろうか。

 そしてサンダーは今季、スーパースターのカーメロ・アンソニー(SF)を獲得した。

 キャリア14シーズンで一度も平均得点20点以下を記録したことがないカーメロは、オフの間も常に移籍の噂が流れていた。しかし、トレード話がまとまらないままトレーンングキャンプ開始目前となり、このままオフのトレードはないかと思われた。そこへ、9月23日に突如、ニューヨーク・ニックスとサンダーの間でトレードが成立したのである。

「ロケッツとのトレードが成立すると思っていた」

 トレード発表後、カーメロはそう語った。たしかに、カーメロ&ハーデン&ポールの「ビッグ3」も見てみたかったが、サンダーでも新たな「ビッグ3」が誕生する。カーメロの相棒は、昨季シーズンMVPのラッセル・ウェストブルック(PG)と、アメリカ代表でも活躍する今オフ加入のポール・ジョージ(SF)だ。

 かつてないほどのビッグネーム3選手の共演となるが、「ボール保持の時間が長い選手が3人もいてはチームとして機能しない」と予測する記者も多い。さらにカーメロは、本来なら今季の構想には入っていなかった選手だ。サンダーはチーム方針を新たに考え直す必要があり、ビリー・ドノバンHCの手腕が試される。

 とはいえ、そんな不安よりも、今季のサンダーは期待のほうが大きく上回っているだろう。

昨季のウェストブルックは平均31.6得点・10.7リバウンド・10.4アシストで「シーズン・トリプルダブル」を達成したが、スリーポイントがさほど得意ではないため、対戦チームはインサイドをガチガチに守ってウェストブルックのドライブに備えていた。しかし、ジョージやカーメロはともにロングレンジからのショットが得意なので、3人のスーパースターが共存できる可能性は高いと予想する。なにより、ジョージとカーメロは思っていたよりコバルトブルーのユニフォームが似合っている。それを躍進の予感とするのは、あまりにも楽観的すぎるだろうか。

 最後に、今季のウェスタン注目選手についても触れておきたい。

 まずは、ロサンゼルス・クリッパーズ(51勝31敗/ウェスタン5位)に加入したミロシュ・テオドシッチ(PG)。リオ五輪でセルビア代表を準優勝に導き、「ヨーロッパ最強PG」と呼ばれる彼が放つ虹色のパスは見逃し不可だ。アメリカ代表として決勝で対戦したデュラントはテオドシッチについて、「あんなパスを出す選手を見たことがない。最高のパスだった」と絶賛している。今季はテオドシッチからブレイク・グリフィン(PF)やデアンドレ・ジョーダン(C)へ、華麗なアリウープパスが量産されるはずだ。

 次は、ダラス・マーベリックス(33勝49敗/ウェスタン11位)のデニス・スミス・ジュニア(PG)。今年のドラフト1巡目全体9位で指名されると、サマーリーグでいきなり平均17.3得点と大活躍し、解説者から「ヤング・デリック・ローズ(キャブス/PG)」と呼ばれた。ドラフト前の身体能力テストでは「ダンク王」ザック・ラビーン(ブルズ/PG)や「レジェンド」マイケル・ジョーダンらと並び、垂直跳びで歴代最高タイの122cmを記録している。その爆発的な身体能力で豪快なダンクを何本も見せてくれるはずだ。

 同じくルーキーでは、ロサンゼルス・レイカーズのカイル・クーズマ(PF)とロンゾ・ボール(PG)からも目が離せない。ロンゾはドラフト1巡目全体2位指名された198cmの大型PGで、球団社長のマジック・ジョンソンに「チームにはリーダーが必要だった」と名指しされるほど期待が高い逸材。

 クーズマはドラフト1巡目全体27位指名だったものの、サマーリーグでその才能を存分に周囲に見せつけた。決勝戦で30得点・10リバウンドを記録してチームを優勝に導き、ファイナルMVPを受賞している。プレシーズンゲームでも好調を維持しており、ターンやステップなどの細かな技術はリーグでも十分に通用することを証明した。

 ウェスタンの見どころは明確だ。ウォリアーズを倒すのは誰だ――。この一点に尽きる。

 古豪スパーズ、新たなビッグ3を結成したサンダー、バスケIQの高いロケッツ、若手スターが集結したウルブズ……。絶対王者を頂点から引きずり下ろすのはどのチームか。それとも、前評判どおりにウォリアーズがウェスタン14チームをすべて蹴散らすのか。どちらの結果が待ち受けようと、ウェスタンの激戦は必至。筋書きのないドラマは来春まで続く。