J.J.スポーンのPGAツアー2勝目、2025年「全米オープン」の優勝決定の瞬間は歴史に残る光景だった。オークモントC…

J.J.スポーンのPGAツアー2勝目、2025年「全米オープン」の優勝決定の瞬間は歴史に残る光景だった。オークモントCCの72ホール目で64フィート(約19.5m)のパットを沈めた。その瞬間に放り投げたパターは空中で停止しているかのように見えた。
LABゴルフの“ゼロトルク”パターはアダム・スコット(オーストラリア)、リッキー・ファウラー、ルーカス・グローバーらが使用して人気はうなぎ上りだったが、男子メジャーでLABのパターで優勝したケースはスポーンが初めて。日曜の上がり7ホールだけで、実に136フィート(約31.9m)のパットを決めた。

「全米オープン」開幕2日前の火曜日に、LABのツアーレップで、スポーンの要求に事細かに応えるジョー・ミエラ氏は、GolfWRX.comの記者アンドリュー・タースキーに「今週はJ.J.の週だ。彼は忍耐強いので、ピッツバーグのようなハードワークの街、そして忍耐が求められるオークモントのコースで勝つのは、理に適い過ぎているくらい。彼は前向きでオークモントは彼のゴルフにピッタリだ」と話していた。
その“予言”が当たったことで、タースキーは翌週「トラベラーズ選手権」の火曜日、再びミエラ氏からスポーンと取り組んだ仕事についてより詳しい話を聞いた。
ミエラ氏は「2024年のコロニアルで、僕らはLAB『DF3 パター』を使用するところから取り組み始めたんだけど、彼はシーアイランド、そしてソニーオープンでこれを実戦投入した。当時は少し苦戦していたけど、僕はLABパターが助けになると確信していた。このパターの良い点は、ストロークを気にする必要がなく、ラインとスピードのみを気にすれば良いところなんだ」と説明した。
確かにスポーンのウィニングパットはラインとスピードが正しかった。また彼は2024年に108位だったPGAツアーのストローク・ゲインド・パッティングを25年は現時点で40位まで上げている。

スポーンは、ロリー・マキロイ(北アイルランド)にプレーオフで敗れた3月の「ザ・プレーヤーズ選手権」の会見でLABゴルフのパターについて、次のように話している。
「パターの調子は格段に良くなった。ここ数カ月は断然安定している。みんなから、どんなパットも決められるんじゃないと期待されていると思う。自分の癖を捨て去ることが必要なんだ。パターやボールの邪魔にならないようにしないといけない。パターに仕事をさせるんだ。ゼロトルクだから、操作は必要ない。フィッティングでライ角を適正にすることが重要だね。これはライ角でバランスが取られていて、科学的な根拠も全てはそこにあるから。これからも期待通りの仕事をしてくれればと思っている」
パターはそれからも期待通りの働きをした。
スポーンのパターには、興味深い点がいくつかある。第一にアライメント。フェースからヘッド後方にかけて分割されて引かれたトップラインを使用しており、初めてミエラ氏と仕事をした際に選んだアライメントラインだった。第二にLABの標準グリップではなく、黒いスコッティキャメロンのグリップを装着している点。ミエラ氏はある日、スポーンがこのグリップをパターに装着して姿を現したのだが、その前に組んでいたグリップと重量がほぼ同じだったため、取り換える必要はなかったと語っている。

世界が驚いた64フィートのウィニングパットに勝るとも劣らないインパクトを放ったのが、71ホール目で見せたドライブである。1オン可能に設定された、打ち上げのパー4の17番。ティショットがホールインしそうになり、簡単な2パットのバーディをお膳立てした。
タイトリストと他社のドライバーを併用していた2024年からタイトリスト「GT3」に一本化した。シャフトは2025年初頭に藤倉コンポジットの「ベンタスブルー」(7X)から、より新型の「ベンタスブラック ベロコア+」(6X)へ。ストローク・ゲインド・オフ・ザ・ティは2025年になって47位に上昇している。

これ以外のセットアップは、フェアウェイウッドがテーラーメイド「Qi10」(15度と18度)、アイアンが「スリクソンZXi5」(4番)と「スリクソンZXi7」(5番-PW)のコンボ、ウェッジは50度の「RTXジップコア」、54度の「RTZ」、60度の「RTX 6」というクリーブランドの複合セットを使用している。フェアウェイウッドには、三菱ケミカル「ディアマナ PD」シャフトを、アイアンとウェッジにはトゥルーテンパー「ダイナミックゴールド ツアーイシュー」を使用している。

複数のスリクソンのツアーレップによると、スポーンは既製品とほぼ同じ長さ、ロフト角、ライ角のアイアンを使用しており、店頭に並んでいる物と違いはほとんど分からないとのこと。一般ユーザーとの違いは、2025年のストローク・ゲインド・アプローチ・ザ・グリーンで7位にランクインしているところだ。
グリップはゴルフプライドのツアーベルベットで、中のテープは1巻のみ。ボールは「スリクソン Z-STAR ダイヤモンド」。

スポーンにとって「全米オープン」王者にふさわしいギアセットアップとなり、彼のパターフィッターのミエラ氏の指摘通り、オークモントとピッツバーグは、スポーンの性格に完璧にフィットしていた。彼は逆境に打ち勝つ忍耐強い男なのである。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)